トレンド情報 2021.02.17
スーパーストリーム
電子による帳簿保存については税制改正による規制緩和もあり、大企業だけでなく
最近は中小企業や個人事業主など規模に関係なく導入が進んでいます。
ここでは電子帳簿保存について今までの経緯やメリット・デメリットだけでなく、導入手続きについても解説します。。
年度 | 改正概要 | 説明 |
平成10年 | 電子帳簿保存法の創設 | 電磁データの保存を認める |
平成17年 | スキャナ保存制度の創設 | 同年にe-文書法が施行されたため、スキャナによる保存※も認められる |
平成27年 | スキャナ保存制度の要件緩和 | スキャナ保存は当初3万円以上の領収書等に限られたが金額要件は廃止され、電子署名もタイムスタンプ※※のみが必要となる |
適正事務処理要件の追加 | スキャナ保存に際し、内部統制担保のために相互牽制や定期チェック等の要件を追加 | |
平成28年 | スキャナ保存制度の要件緩和 | 利用するスキャナの要件緩和、スマホの読み取り可能、小規模企業者への事務処理要件緩和 |
平成31年 | 電子帳簿保存法の特例追加等 | 電子帳簿承認の提出期限の特例、承認申請手続きの改正等 |
令和2年 | 電子帳簿保存法の要件緩和 | タイムスタンプの見直し等での利便性向上 |
※スキャナ保存制度とは、取引の相手先から受け取った「紙」の請求書等(決算関係書類を除く)について、一定の要件の下でスキャンデータによる保存が認められる制度で、電子帳簿保存法の一環です。
※※タイムスタンプとは、一定の時刻にその電子データが明らかに存在しており、かつ、その時刻以降に不正な改ざんなどがされていないことを証明するためのしくみです。
さらに、令和3年度税制改正大綱では次の改正点が挙げられています。
利用しやすくなる半面、電子データの運用についてさらなる配慮が必要になってきます。
さらには、組織改正や事業見直しなどでシステムを更改する際には過去の電子データを閲覧できる環境が必要となります。
電子帳簿保存法の対象となるものは、「国税関係帳簿書類」と呼ばれます。
わかりやすく言えば、会計に係る「帳簿」と「書類」のことです。
会計処理をしていると、さまざまな書類を作成したり、受領又は相手先に発行したりしますがそれらをまず、「帳簿」と「書類」に分けて考えます。
決算関係書類以外の会計書類には、受領したものや発行した控えが残っているものがあります。
下の図1において、特例となっている部分が電子帳簿保存法により特例的に電子保存が認められている範囲です。
図1)国税関係帳簿書類の保管方法
国税関係帳簿書類 | 紙での保存 | 電子データで保存 | スキャナ保存 | |
帳簿 | 原則 | 特例 | 不可 | |
所得税法・法人税法等 | 電子帳簿保存法 | ー | ||
書類 | 受領書類 | 原則 | ー | 特例 |
所得税法・法人税法等 | 電子帳簿保存法 | |||
発行書類 |
原則 | 特例 | 特例 | |
所得税法・法人税法等 | 電子帳簿保存法 | 電子帳簿保存法 |
※ https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07/01.htm より筆者作成
電子帳簿保存法ではすべての帳簿書類の電子帳簿保存が認められているわけではありません。特に、会計帳簿及び決算関係書類については、スキャナ保存は認められていません。
【電子帳簿保存法を導入する方法とは?】
電子帳簿保存を導入する際、まず、企業の規模にあわせて適用範囲を検討します。
すなわち、「電子データ保存」と「スキャナ保存」を分けて考え、さらに「電子データ保存」を、「帳簿」と「書類」に分けて考えます。
分けて考える理由は、それぞれによって適用要件が異なっており、申請書も別となっているからです。
例えば、電子データ保存の「帳簿」と「書類」に求められる要件の違い(抜粋)は次のとおりです。
電子データ保存の適用要件 | 帳簿 | 書類 |
入力データの訂正や削除をした場合の内容を確認できる | 要 | 不要 |
イレギュラーな期間の入力履歴が確認できる | 要 | 不要 |
電子化帳簿とその他の帳簿の関連性が確認できる | 要 | 不要 |
保存場所には出力装置を含むコンピュータやマニュアルが整備されている | 要 | 要 |
取引年月日、勘定科目や金額等から検索可能なことほか | 要 | 要 |
申請書は、電子データによる帳簿の備付を開始する日の3か月前の日までに税務署に提出します。
申請の際、例えば電子データ保存の場合では申請書に次の添付資料が必要です。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/pdf/1-1.pdf
(国税庁:国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の承認申請書 (帳簿))
なお、上記の添付資料のうち、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が認証する会計ソフトを使用する場合にはシステム概要書は不要となります。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/pdf/JIIMA_list.pdf
(国税庁:JIIMA承認情報リスト)
電子帳簿保存については令和3年度の税制改正だけでなく、今後も消費税におけるインボイス制度導入なども控えているため、さらに導入しやすくなっていくと思われます。
クラウド会計などの利用で経理そのものが自動化される傾向にあるため、担当者にあっては電子データの取り扱いやセキュリティへの対応へと業務内容も変化していくでしょうね。
電子帳簿保存の導入にあたって、最も気を付けるべきは「チェック体制」です。
帳簿の保存方法を変えると、今までの業務フローとは異なる事務処理が必要になります。業務フローが変われば、その分誤謬や不正(データの改ざん)のリスクが高まるでしょう。
このようなリスクを抑えるためにも、例えば証憑と電子データを照合する定期検査では2名以上の担当者による確認が求められます。
電子帳簿の保存にあたり誤謬や不正が発生すると、誤った申告をしてしまうリスクのほか、健全な業績管理を行えなくなるリスクも生じます。
電子帳簿保存を導入するにあたっては、変更した業務フローが安全に進んでいるか慎重に確認しながら進めることをお勧めします。
【監修者プロフィール】
公認会計士・税理士
藤沼寛夫
2014年:EY新日本監査法人
2018年:東京共同会計事務所
2019年:藤沼公認会計士事務所 開業
2020年:アカウントエージェント株式会社 設立
公認会計士の転職日誌: https://flyordie.jp/
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