公認会計士 中田清穂の会計放談 2020.04.06
中田 清穂(なかた せいほ)
最近の新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、
各企業ではテレワークが進められているようです。
一般社団法人日本CFO協会(以下、CFO協会)が行なった調査では、 今年2月と3月にテレワークを実施していないか、実施しても出社する必要があったと回答した経理・財務部門が70%にものぼり、 そこでの課題として、以下の項目が上位にあげられました。
これでは、今回の新型コロナウイルスのケースにとどまらず、
今後も、大震災の発生などで出社できない状況になった場合、経理・財務機能がマヒすることになります。
経理・財務機能のマヒは、上場企業の場合ですと、決算発表、株主総会招集通知、有価証券報告書、税務申告など、決算に関する法務日程が順守できないという事態を招きやすくなるでしょう。
また、上場企業にとどまらず、非上場の企業でも、請求・売上代金回収、仕入代金支払い、給与振り込み、資金調達、資金繰りなど、会社経営の根幹にかかわる機能がマヒすることになりかねません。
CFO協会の先の調査では、「今後は緊急時のテレワーク体制は必要か?」という問いに対して、「非常に必要69%」「どちらかというと必要27%」と、 両者を合わせると実に96%の方々が、「必要」と回答しています。
テレワークが必要と感じているのに、テレワークが実現できないという状況であることが実証されたわけです。
経理・財務部門では、テレワークは実現できないのでしょうか。
そんなことはありません。
CFO協会の先の調査では、テレワークを実施していない経理・財務部門が54%でしたが、41%は強制的あるいは強く推奨されて、テレワークを実施したようです。
この41%のうち59%はテレワーク中に出社する必要がなかったと回答しています。
つまり、全体の約24%は、全く出社しなくてもテレワークで経理・財務業務ができたということです。
テレワークを実施する上での課題として上位にあがった、上記(1)~(6)の課題の一つひとつをクリアしていけば、 テレワークの実現可能性が上がっていくでしょう。
できない理由を上げて、二の足を踏むことは誰にでもできるんです。できない理由を上げて、何もやらない企業が多いんです。そうはいっても失敗しないためには、実施範囲を絞り込んで、スモールスタート方式で始めることをお勧めします。
当初コストが抑えられますし、早めに効果が確認できて、社内や上司に認めさせることが容易になります。万一失敗しても損害が小さく抑えられます。
そして、絞り込んだ範囲で小さな成功を達成して、実施範囲を徐々に広げていくのです(スパイラル・アプローチ)。
以上、「狭い範囲でとにかく始める!!」ということが、最大のポイントなのです。
テレワークを実現する、絶好の機会です。
これを逃すと、「災害大国ニッポン」で生き残る会社にはなれないでしょう。
中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。