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管理部門における会計監査への対応(その1)

管理部門における会計監査への対応(その1)

 株式会社アクリア

株式会社アクリア、コンサルタントの新井です。

今回は「管理部門における会計監査への対応」について取り上げていきます。

■総論
法定されている会計監査は、社会的影響力を持つ法人が、投資家に対して適正な財務報告を行うことを担保するために必要不可欠な制度です。
しかし、監査の直接の窓口となる管理部門ご担当者は、日々の業務に追われる中で監査対応も行わなければならないため、特に決算月には業務に忙殺されてしまうこともあるのではないでしょうか。
当コラムでは、そのような監査を受けている会社の管理部門ご担当者に向けて、監査を受けるうえでの一助となるような情報をまとめさせて頂きました。

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監査を受けるうえで、会社のご担当者が悩まれるポイントには以下が挙げられます。
①監査上の指摘による決算数値の修正
②監査の遅延による決算遅延
③複雑な会計上の論点についての会計監査人とのコミュニケーション
今回は①監査上の指摘による決算数値の修正、次回は②監査の遅延による決算遅延、③複雑な会計上の論点についての会計監査人とのコミュニケーションを説明します。

①監査上の指摘による決算数値の修正
監査を従前から受けている会社であれば、社内で決算数値が固まったにも関わらず、監査により誤りの指摘を受けたことで、決算数値の修正を余儀なくされたご経験はあるのではないでしょうか。
こちらは誤りの内容にもよりますが、上流に遡って、会計システムにおいて仕訳を修正する必要が出てくる場合もあり、決算報告が迫っている中で再度開示資料を作成しなければならなくなる等、会社の管理部門ご担当者の負担を増大させます。
また、誤りの金額規模にもよりますが、決算着地見込との大きなズレの要因にも繋がりかねないため、出来れば誤りの指摘は受けたくないものです。
こうした指摘を受けないようにするためには、以下の施策があります。

(1)重要な会計上の論点について事前に会計監査人と協議を行い、着地を決めておく

重要な会計上の論点と言っても、会社の業種業態や置かれている経済状況によって重要となりうる論点は異なりますが、重要な会計上の論点となりやすく、会計監査人と事前に協議を行っておいた方が良いと考えられる論点としましては、将来予測を会計数値として反映させる性質を持っている「会計上の見積り」に関する事項(固定資産の評価、株式の評価、のれんの評価、税効果会計、各種引当金の計上等)が挙げられます。
例えば固定資産の評価について、事前に会計監査人と協議を行っていない場合には、会社が回収可能と判断した固定資産簿価について、帳簿が締まり、監査を受けているタイミングで会計監査人からサプライズ的に疑義を示され、固定資産の減損損失を追加計上しなければならなくなる等の状況に陥る可能性があります。
このような事態を避けるためには、決算が始まる前に会計監査人と協議を行い、重要な会計上の論点について認識のすり合わせを行うことが肝要です。

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(2)貸借対照表勘定科目の残高明細を作成し、あるべき金額との乖離を把握する

手作業による仕訳の起票において、金額・勘定科目・補助科目・取引先等を誤ってしまうことは、しっかりとした内部統制を構築している会社であっても起こりうる事象です。
このようなミスは、上長の確認により是正されることもありますが、仕訳の数が膨大になればなるほど看過しやすくなるものでもあります。
このようなミスを自発的に発見・是正するためには、貸借対照表勘定科目については残高明細を作成し、本来想定される残高と実際の残高が整合しているかを確認することが有用です。
例えば、ある取引先への売上債権の回収サイトが1ヶ月である場合、当該取引先に対する売上債権の残高は当月の売上高1ヶ月分により構成されることが想定されます。
ここで、売上債権の残高明細を作成していれば、実残高が1ヶ月分の売上により構成されているか否かが明瞭となるため、仮に数か月分の売上高に相当する売上債権がある場合には、それが仕訳起票におけるミスである可能性を事後的に検証することが可能となります。(加えてこの具体例ですと、1ヶ月超の滞留債権の存在も顕在化します。)

(3)損益計算書勘定科目の分析を実施し、不自然な増減を把握する

(2)では貸借対照表勘定科目にフォーカスしましたが、損益計算書勘定科目についても、分析による検証をすることでミスを発見・是正することが可能です。
具体的には、取引先別・補助科目別に月次や四半期、前年同期との比較分析を適時に行うことなどが考えられます。
そこで説明のできない増減項目があった場合には、その裏には誤りが潜んでいる可能性もありますので、さらに掘り下げて内容を確認してみる必要もあるでしょう。

(4)重要性等に鑑みて修正を行わない

監査で受けた指摘事項について、金額的・質的重要性やその他の状況に鑑みて、修正を行わないという選択肢も考えられます。

この方法は、会計監査人との協議が必要になりますが、指摘事項のうち影響がそれほど大きくないものについてはその修正を翌期とすることで、スケジュールの遅延や修正の負担を軽減することができます。ac8_3

ただし、誤りの大きさによっては、経営者確認書(会社の財務諸表が適正であることを、経営者が確認した旨を記載し、会計監査人に提出する書類)に、未修正の指摘事項について記載を求められることがあります。

この経営者確認書への記載が必要なほどに重要と判断された指摘事項について、未修正事項のまま残してしまうと、会計監査人は会社に対するリスク認識を厳しくしてしまう傾向にあることから留意が必要です。

なお、監査における重要性の基準値には様々な指標が用いられますが、一般的には以下の指標が参考になりますので、以下のBを参考にして自社の科目分析を行うことで、監査と同程度の粒度の分析を実施することが可能です。

 A:税引前当期純利益等(会社により指標は異なります)×5%=監査意見に影響を与える程に重要な金額
 B:A×75%~50%=会計監査人が監査手続を実施する基準値
 C:A×5%=経営者確認書への記載可否判断の基準値

まとめ

今回述べさせて頂いた議論のポイントは、一旦確定させた数値を如何に変更させないかということであり、まとめると、
1.そもそも指摘事項が検出されないように正確な数値を作る(会計監査人との事前の協議と徹底した社内レビュー)、
2.指摘事項が検出されても重要性が乏しければ数値の変更は行わない、ということになります。
次回は②監査の遅延による決算遅延、③複雑な会計上の論点についての監査人とのコミュニケーションについて取り上げていきます。

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