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管理部門における会計監査への対応(その2)

管理部門における会計監査への対応(その2)

 株式会社アクリア

株式会社アクリア、コンサルタントの新井です。

前回から引き続き「管理部門における会計監査への対応」について取り上げていきます。

監査を受けるうえで会社のご担当者が悩まれるポイントには以下が挙げられます。
①監査による誤謬等の指摘による決算数値の修正
②監査の遅延による決算遅延
③複雑な会計上の論点についての会計監査人とのコミュニケーション
今回は②監査の遅延による決算遅延、③複雑な会計上の論点についての会計監査人とのコミュニケーションを説明します。

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②監査の遅延による決算遅延

法定監査が義務付けられている計算書類や有価証券報告書は、会計監査人の監査意見なくして提出することは出来ず、監査の遅延は決算発表の遅延に繋がります。
しかし、監査は会社の決算数値を検討するという性質上、どうしても決算締め後の後追い作業になるものが多い傾向にあります。
決算早期化を進めようとしている会社において、監査の早期完了は避けて通れないところですので、是非以下の施策を講じて頂くことを推奨します。

 

(1)重要な会計上の論点及び取引上のトピックスの共有

前回のコラムでも述べさせていただきましたが、重要な会計上の論点は事前に監査人と協議をしておくことで、決算タイミングでの検討事項を減らすことができ、ひいては決算タイミングにおける監査時間削減に繋がります。また、会計上の論点のみならず、当期に発生した経常的でない取引上のトピックスについても、決算前に共有を行っておくことで、自社では予期しなかった会計上の論点の、会計監査人による早期検出にも繋がりますので強く推奨します。私も上場会社の監査を担当していた頃は、毎期議論となる固定資産の評価について、定例ミーティングを設定し、減損の兆候の有無などの重要論点のすり合わせを事前に行うことで、決算時期におけるお互いの負荷を減らしていました。

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(2)経理資料の明瞭性向上

監査人に提供する資料には、残高試算表、仕訳日記帳、総勘定元帳、固定資産台帳などのオーソドックスなものから、会社で独自に作成しているエクセル資料等もあります。ここで、会社独自のエクセル資料等については、監査に必要な帳票であれば、その内容の合理性が検討され、監査調書に利用されることがよくあります。そのため、こうした資料が明瞭性に欠ける場合(例えば、決算数値との整合性や他の資料との関連性が不明瞭であったり、計算式が分かりにくい場合)、資料の読解に時間を要することになり、監査の遅延に繋がります。したがって、このような事態を避けるためにも、第三者が見ても数値の繋がりや検証の仮定が分かりやすい資料作りを心掛けると、決算時期における監査時間の削減に繋がります。
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(3)監査スケジュールのすり合わせ

決算が遅延してしまう要因のひとつとして、決算数値確定のタイミングと監査開始のタイミングにミスマッチが生じていることがあります。具体的には個別財務諸表の数値が確定してから個別財務諸表監査開始までのタイムロス、連結財務諸表数値が確定してから連結財務諸表監査開始までのタイムロス、開示資料作成が完了してから開示資料監査開始までのタイムロスの3つのタイムロスが生じている可能性に留意が必要です。社内作業が完了したにも関わらず、監査開始との間にこのようなタイムロスがある場合には、監査スケジュールについて見直しの要請を会計監査人に行っても良いかもしれません。
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(4)財務分析の実施と共有

監査手続のひとつとして、勘定科目の増減分析や趨勢分析があります。前回のコラムで述べさせて頂きましたが、社内レビューの一環として行った勘定科目の分析結果を会計監査人に共有することで、会計監査人による分析手続の省力化に寄与することができ、延いては監査時間の削減に繋がる可能性があります。
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(5)監査手続の前倒し実施の提案

監査手続は前述の分析手続以外にも様々あり、その中には期末日前に前倒しで実施できる性質のものがあります。例えば、帳簿に記録されている取引の実在性や正確性を検証するために、契約書や請求書等の証憑との突合を行う手続がありますが、こうした手続は期末に一括して実施するのではなく、例えば四半期毎に、都度実施を会計監査人に依頼することで、期末における監査手続の省力化に繋がります。また、在庫の棚卸に会計監査人が立ち会うことにより棚卸資産の妥当性を検証する手続や、債権債務残高の妥当性を検証するために、取引先に債権債務残高の認識額に関する齟齬を確認するための紙面を送付する手続がありますが、これらの手続についても、期末日付近の一定の基準日を定めて前倒しで実施をすることが可能である場合もありますので、会計監査人に手続前倒しの相談を行っても良いかもしれません。

③複雑な会計上の論点についての監査人とのコミュニケーション

2021年4月1日から適用が開始される新しい収益認識の基準を始めとして、日本の会計基準は国際的な会計基準(IFRS)の影響を受けて日々改正が行われており、今後もそのトレンドは続くことと考えられます。そのような環境下において、常日頃から会計基準の変化をキャッチアップし、自社における影響の有無を判断することは容易ではありません。例えば、前述の新収益認識基準は、収益認識に関する包括的な会計基準の制定ということもあり、影響が多岐に渡ることから、その影響度調査や監査人への説明に苦労した方も多いのではないでしょうか。また、新たな会計基準の適用に関わらず、税効果会計や固定資産の減損会計など複雑な会計基準はいくつも存在するため、当該会計基準に関連した監査人とのコミュニケーションに苦労をする場面もあるかと思われます。
このような状況に対応するためには、以下が考えられます。
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(1)セミナーの活用

企業会計基準委員会(ASBJ)や大手監査法人等が主催しているセミナーへの参加は、新たな会計基準や複雑な内容の会計基準をキャッチアップする早道です。専門書を手に取って読み込むことは非常に大事ではありますが、初めてその基準を学ぶ際には多くの時間を要します。そのようなケースでは、セミナーを活用して大枠を捉えたり、ケーススタディに基づいた基準の解説を受けることで、より基準に対する理解を深めることができます。また、質疑応答の機会があれば自社の疑問点を直接ぶつけることも可能です。

(2)アウトソーシングの活用

自社におけるリソースの問題等を抱えており、時間を費やして専門書やセミナーに取り組む時間の確保が難しい会社もあります。そういった状況の場合には、当該会計論点について外部の専門家にアウトソースすることも検討してはいかがでしょうか。一時的にコストが増加してしまう可能性はありますが、一度アウトソースを行い論点の整理をしてもらい、後から自社にてキャッチアップしていくこととすれば、管理部門における当該論点への労力は非常に少なく済みます。

まとめ

前回及び今回のコラムでは管理部門における監査への対応について書かせて頂きました。
監査にうまく対応していくためのポイントをまとめますと、以下になります。
1.監査人と事前に綿密なコミュニケーションを行うこと(監査の前倒しやスケジュールすり合わせを含む)
2.自社で事前に科目分析を行うこと
3.監査提供資料は明瞭性を念頭に置くこと
4.セミナーや必要に応じてアウトソースの活用を検討すること
が考えられます。

弊社におきましても上場会社様の管理部より、昨今の基準改正に伴う論点の検討や、既存の複雑な会計基準における検討のサポート、監査提供資料の作成サポート等を依頼いただくことが多くあります。こうしたご依頼に応えられるよう、監査法人での勤務経験のある人材を整えて対応をしておりますので、お困りの際にはお問い合わせ頂ければ幸いです。

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