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IPO準備会社に求められる決算早期化、内部統制、開示体制確保について(その2)

IPO準備会社に求められる決算早期化、内部統制、開示体制確保について(その2)

 株式会社アクリア

株式会社アクリア、コンサルタントの角です。
前回に続き、今回は内部統制について取り上げます。

●内部統制

(1)概要

内部統制とは、事業の適切な遂行のために遵守するルールや仕組みであり、下記を目的とします。

・業務の有効性及び効率性
・財務報告の信頼性
・事業活動に関わる法令等の遵守
・資産の保全

IPO準備で求められる内部統制の主たる目的は財務報告の信頼性の確保になります。
ただし、内部統制の4つの目的は相互に関連しているため、他の目的も達成していくこととなります。
上場後は内部統制報告書の提出と内部統制監査(一定規模(資本金100億円又は負債総額1,000億円)未満の新規上場会社は上場後3年間免除)が必要とされます。財務報告に関する内部統制の状況を経営者が評価し、その評価結果について監査人の監査を受けることとなります。そのためには、IPO準備段階で内部統制を整備及び運用していくことが必要となります。
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(2)整備事項

金融商品取引法に規定される内部統制の構築にあたっては、全社的な内部統制と業務プロセスに係る内部統制に分類して整備する必要があります。また、業務プロセスは決算財務報告プロセスとその他の業務プロセスに大別されます。
全社的な内部統制とは、企業集団全体を対象として、企業集団全体に広く影響を及ぼすような内部統制を指し、実施基準には、全社的な内部統制について基本的要素ごとに42の評価項目が例示されています。企業は、自社に適した評価項目を決定し、チェックリストにより評価できるように整備していきます。

業務プロセスに係る内部統制については、下記3点セットを作成することが一般的であり業務を可視化することで評価を行える状況に整備することが必要になります。

・業務記述書
・業務フローチャート
・RCM(リスク・コントロール・マトリクス)

なお、決算財務報告プロセスのうち、全社的な観点の評価が適切なものはチェックリストによる評価が行えるように整備を行います。
また、IT統制についてもチェックリストによる評価を行うことのできる状況に整備することが一般的になります。

 

(3)内部統制の構築

IPO準備会社で内部統制を整備運用していくことが必要となること、整備すべき事項は先に述べましたが、そもそもとしてどのように構築していくのでしょうか。

まずは自社がどのような状況にあるのかを把握する必要があります。
そのため、規程類の有無の確認や、ルールやマニュアル等の閲覧、関係部署担当者へのヒアリングを行います。
その後、内部統制の各種チェックリストや3点セットの作成を行います。
この時点で作成したものは、例えば取引単価を間違えるリスクに対して、システム上登録単価以外の単価入力を行えるようになっている、会計システムへ他システムからCSV入力で取込む場合に網羅的に仕訳が入力されないリスクに対し、会計システムへの取込み結果と取込み対象の整合性を確認する統制が行われていない等の問題点や課題が浮き彫りになります。
それらに対し、適切な改善を行っていきます。これを繰り返していき、財務報告に関する内部統制を構築していくのです。

統制行為を構築するに当たり重要な点は、必要な箇所にリスクに対応する統制を設けられているかということ以外にも、その統制行為が形骸化するようなものではないか、判断に関する事項であれば統制行為を実施する者は適切な能力を有しているかという視点も必要になります。

内部統制は整備されるだけではなく、それが適切に運用される必要があります。そして、改善によりリスクに対する統制行為を追加する必要がある場合等、各部署における業務内容に負荷が掛かることも事実です。
そのため、改善を行う際には、社内関係者の理解を促し、共有を図ることが非常に重要であり、かつ、実行可能性のある統制行為を設定していくことに留意が必要です。

(4)まとめ

内部統制報告制度は、上場申請期(N期)から適用されます。
また、上場申請直前期(N-1期)は内部管理体制の運用実績を積み上げ、生じた課題は改善していく必要があります。
そのため、上場申請直前々期(N-2期)では内部統制の構築を行い整備されている状況にあることが好ましいと考えられます。

その他の視点としては、早い時期に内部統制が整備運用されていることは、監査法人にとっても良いことと考えられます。
内部統制が適切に整備運用されている場合には、それだけ体制がしっかりとしている裏付けであると同時に、監査手続も内部統制に依拠した手続を実施できる可能性があるためです。監査難民問題が取り沙汰される昨今ではそのような視点も考慮しつつ、早めに手を付けたい箇所であると考えられます。

また、内部統制の構築はIPOを目指すことがまだ決まっていない場合にも内部体制の強化に有用であり、会社内にチェック機能の強化、ルールや手順の明文化、責任範囲の明確化等をもたらします。

当社では知識と経験を有する者による内部統制の構築支援、内部統制の評価支援を一括して又は分割して提供しています。
外部の専門的な視点を取り入れることは、リソース不足の解消のみならず、形式的ではない実質的な内部統制となると共に効率的に内部統制業務を進めることが可能となります。
自社での状況に照らしてご検討頂けますと幸いです。

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