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開示業務について[コロナ禍での特殊対応事例含む](その1)|一般的な上場会社の開示書類およびそのスケジュールや内容

開示業務について[コロナ禍での特殊対応事例含む](その1)|一般的な上場会社の開示書類およびそのスケジュールや内容

 株式会社アクリア

株式会社アクリア、コンサルタントの真部です。

第4回の内容は、「開示業務について[コロナ禍での特殊対応事例含む](その1)」です。
第4回及び第5回は開示業務をテーマに、第4回にて一般的な上場会社の開示書類およびそのスケジュールや内容について、
第5回にて「記述情報の開示の原則」における新型コロナウイルス感染拡大の影響について取り上げていきます。

はじめに

決算を迎えた一般的な上場会社の開示書類およびそのスケジュールは、以下の通りです。

まず、直近の決算期速報という位置づけである「決算短信」「四半期決算短信」(以下、短信)を作成します。
東京証券取引所では、「決算短信」については遅くとも決算期末後45日以内の開示を適当としています。

短信の次に、債権者や株主に向けた、会社法に基づく「計算書類及び事業報告」を作成します。定時株主総会の2週間前までに株主に発送されている必要があります。

最後に、投資家に向けた開示書類である「有価証券報告書」を作成します。法定提出期限は90日となっています。
なお、四半期決算の場合は、「四半期報告書」の法定提出期限が45日であるため、「四半期決算短信」とほぼ同時に作成することになります。

短信について

短信は、東京証券取引所により「決算発表の早期化の要請」がされており、遅くとも決算期末後45日以内の開示が適当であり、さらに、決算期末後30日以内がより望ましいものとされています。
有価証券上場規程第404条により、「上場会社は、事業年度もしくは四半期累計期間又は連結会計年度もしくは四半期連結累計期間に係る決算の内容が定まった場合は、 直ちにその内容を開示しなければならない」とされていることによります。
ここで、短信は、監査や四半期レビューの手続きの終了を開示の要件とはしておらず、あくまで決算の内容を迅速に開示する役割が求められています。

有価証券報告書について

一方、「有価証券報告書」「四半期報告書」(以下、有価証券報告書等)は法定開示資料であるため、監査法人の監査を受け、「監査報告書」の添付がないと開示することができません。
有価証券報告書の提出期限は90日ですが、「監査報告書」をゴールとした監査業務のスケジュールを加味すると、実際には短信の発表時期までには数字はほぼ固まっていることが殆どです。
このため、上述のとおり、短信では監査は義務付けられていないものの、会社法監査又は四半期レビュー等監査の終了後に短信を開示する会社も少なくありません。

有価証券報告書等は、開示ガイドラインや財務諸表等規則等、様々なルールに基づいて作成しなければならないため、ある程度の知識が求められます。

また、経理とその他各関係部署、監査法人等との連携も求められます。効率的に作業するためには、必要な基礎データや各種情報を収集するためのマニュアルやフォーマット等の体制を整備し、 業務を標準化することが有用となります。

また、毎年なにかしらの法律改正に伴い開示項目のルール改正があるため、最新の情報収集に労力を費やすことも必要となります。
例えば、改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(2020年3月31日公表)においては、 2020年4月1日終了の連結会計年度及び事業年度~2021年3月30日終了の同年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表において早期適用できるため、早期適用する場合、
当会計基準に沿って貸借対照表・損益計算書(契約資産、契約負債等)、会計方針の変更、会計方針に関する事項、収益認識関係の注記等における新たな表示方法を認識しておく必要があります。
企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」(2019年7月4日公表)においては、
2020年3月31日以降終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から早期適用できるため、こちらを早期適用する場合も、会計方針の変更、
会計方針に関する事項、金融商品関係の注記等における新たな表示方法を認識しておく必要があります。

このような、新しい会計基準に伴う記載内容の変更については、プロネクサス・宝印刷の記載例や、各監査法人のホームページで掲載されている開示に関する特集記事、
EDINETによる他社事例検索を参考にすることが有用となります。

有価証券報告書の非財務情報部分については、「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(2019年1月31日公布)により、項目ごとに段階的に、
2019年3月31日以降終了する年度、2020年3月31日以降終了する年度の適用となっています。
これについては、2019年3月19日公表の「記述情報の開示の原則」とともに公表され、随時更新されている「記述情報の開示の好事例集」を参考にすることが有用です。

当社におきましても上場会社様の管理部より決算開示サポートを依頼頂く事が多くあります。
特にコロナ禍においてリモートワークを中心に経理業務を実施し、かつ開示期限も迫る中で体制変更下でも期限を遵守し、専門的内容にも対応するため、

また正確性担保のために新規にご依頼頂く事例も複数発生しました。
各種開示書類の作成に精通した公認会計士を適材適所に配置してアウトソース支援を受けることにより、開示書類のミスや重複を防ぎ、開示実務の効率化を実現できている事例が増えてきています。

また、開示業務は管理部の財務報告プロセスの最終工程であるため、開示に不備が生じると開示体制の見直しが急務となりますが、
決算開示スケジュールに追われている場合の多くはその前工程に改善すべき要素がある可能性が高い点にも留意が必要です。
具体的には、1.単体決算業務⇒2.連結決算業務⇒3.監査対応業務⇒4.開示業務のそれぞれにおいてどこがボトルネックとなっているかにつき見極めたうえで適切な改善を実施する必要があります。

会社毎に異なる部分は勿論ありますが、単体決算業務改善は以下の手順となります。開示業務の改善を検討する際には以下の論点についても同時に検討し、一番効果が大きい箇所から改善を進めることが効果的です。
※第5回では連結決算業務改善の手順について簡単に解説します。

【単体決算業務改善の手順】

  1. 決算開示業務作業を分析し、以下の改善を図ります。
      ✔ ボトルネックの解消,二重作業解消によるスピードアップ
      ✔ 決算開示資料をカスタマイズし,有用な経営管理資料とすることによるバリューアップ
  2. 具体的なスケジューリング、人材配置に関する現状把握及び見直しを実施し、リソース不足(パワー面、能力面)部分については必要な部分に限定してアウトソーシング対応を検討します。
  3. 月次決算を利用し、決算開示に必要な体制の構築・運用を前もって整備するように設計します。月次決算を強化することで四半期や決算時のリソース不足問題を少しでも解消し、

属人的対応を減らします。

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