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開示業務について②(コロナ禍での特殊対応事例含む)

 株式会社アクリア

株式会社アクリア、コンサルタントの真部です。

第5回の内容は、「開示業務について②(コロナ禍での特殊対応事例含む)」です。
第4回にて一般的な上場会社の開示書類およびそのスケジュールや内容について解説し、開示業務の改善について単体決算プロセスにも触れて記載しました。第5回では「記述情報の開示の原則」における新型コロナウイルス感染拡大の影響について取り上げていきます。

「記述情報の開示の原則」における、新型コロナウイルス感染拡大の影響について

金融庁は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により多くの上場企業が不確実な経営環境におかれている状況下において、投資家等が期待する好開示のポイントとして、先に公表された「記述情報の開示の原則」(2019年3月19日公表)をもとに、「新型コロナウイルス感染症の影響に関する記述情報の開示Q&A」を2020年5月29日に公表しました。
概要は以下のとおりです。

・「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」
新型コロナウイルス感染症の影響は事業等によって異なるため、経営者の認識についてはセグメントごとに具体的に記載し、今後の経営環境にどのような変化をもたらす可能性があるかについても記載することが期待されています。
経営方針・経営戦略を見直す場合は、従前からどのような点を変更したのか、KPIを変更する場合にはその具体的な変更理由を記載することが期待されている一方、経営方針・経営戦略等を見直す必要がないと判断した場合であっても、当判断に至った背景を具体的に示すことが期待されています。
事例では、新型コロナウイルス感染により大きな痛手を被ったと記載したうえで、セグメントごとに影響の大小とその内容が記載されていました。また、実際に実施した新型コロナウイルス感染拡大の防止策や、アフターコロナあるいはウィズコロナにおけるビジネスモデル等の見直し施策の推進状況などが記載されていました。

・「事業等のリスク」
経営成績等の状況に影響を与える可能性があると認識している場合、状況認識とその対応策、定量的な情報が求められています。対応策は、経営成績等に係るもののみではなく、リモートワーク等の新型コロナウイルスの感染防止対策がどのように行われているかについて具体的に記載することが期待されています。
また、定量的な情報として、概算値や影響額の範囲、影響額を算出する際の前提となる仮定やシナリオを記載することも重要とされています。
有価証券報告書提出時点において見積りが困難な場合は、その旨を記載し、影響額を合理的に見積もることができるようになった時点で、四半期報告書等において情報提供することとなります。
こちらの事例では、影響額に関する記載をしていない又は現時点において合理的に算定することが困難であると記載している企業が多く見受けられました。

・「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(以下、「MD&A」)」
当期の増減要因として、新型コロナウイルス感染症による影響とそれ以外の影響とに区分し、セグメントごとの新型コロナウイルス感染症の影響の記載、また、その影響が一過性のものか、あるいは長期にわたり影響を与える可能性があると考えているか等を記載することが期待されています。

ここで、固定資産の減損や繰延税金資産の回収可能性等の「会計上の見積り」については、企業会計基準委員会の議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」(2020年4月10日、5月11日追補)において、経理の状況以下の注記「追加情報」において具体的に開示することが強く期待されています。
これは、最善の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定が企業間で異なり、同一条件化でも見積もられる金額が異なることもあるため、どのような仮定を置いて会計上の見積りを行ったかについて、財務諸表の利用者が理解できるような情報を具体的に開示する必要があると考えられていることによります。
この「追加情報」や他の注記において具体的に記載しきれない場合に、その補足として、「MD&A」においても「会計上の見積り」を記載し、見積りに用いた仮定、その仮定を選択した背景や当該仮定が変動することによる経営成績等への影響について記載することが期待されています。

定量的な記載が困難な場合、想定されるシナリオ等を定性的に記載することになります。また、当年度に与える影響の重要性が乏しいとしても、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する追加情報の開示を行うことが有用であるとされています。
事例においては、新型コロナウイルス感染症の影響は、2021年3月期の一定期間続くものとされ、早くて夏頃には収束するものと記載している企業が多いように見受けられました。
また、短期的な手元資金確保のため資金調達を行ったことを記載している企業もありました。
「MD&A」に記載している場合の「会計上の見積り」における事例では、新型コロナウイルス感染症の影響等の見積りや前提条件に変更が生じた場合に、財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす事項について記載されていました。

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の開示について

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況下においては、2020年4月17日に「企業内容等の開示に関する内閣府令」が改正され、2020年4月20日から9月29日までの期間に提出期限が到来する有価証券報告書等の提出期限を一律2020年9月30日まで延長しています。

日本経済新聞社が行った、7月上旬までに提出された2020年3月期の有価証券報告書を対象とした集計において、新型コロナウイルスの影響を開示した上場企業は全体の7割でした。

2021年3月期決算に向けて、今後「四半期報告書」が提出されていくことになりますが、新型コロナウイルス感染症の影響に関する内容については、次のことに留意する必要があります。
2020年6月26日、上述の企業会計基準員会の議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」が更新され、四半期決算における考え方が以下のとおり示されました。

まず、前年度(2020年3月期)の財務諸表において、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する追加情報の開示を行っている場合で、四半期決算において当該仮定に重要な変更を行ったときは、他の注記に含めて記載している場合を除き、四半期財務諸表に係る追加情報として、当該変更の内容を記載する必要があるとされています。
重要な変更を行っていないときも、重要な変更がないことが財務諸表の利用者にとって有用な情報となると判断される場合には、四半期財務諸表に係る追加情報として、その旨を記載することが望ましいとされています。
一方、前年度の財務諸表において仮定を開示しておらず、四半期決算において重要性が増し新たに仮定を開示すべき状況になったときは、他の注記に含めて記載している場合を除き、四半期財務諸表に係る追加情報として、当該仮定を記載する必要があるとされています。
つまり、四半期報告書においては、有価証券報告書において新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りを追加情報として記載したかどうかにかかわらず、当該見積りの変更の影響も含め、適時適切に投資家へ情報提供することが強く期待されているといえます。

さらに、非財務情報部分については、「会計上の見積り」以外にも、「事業等のリスク」における新型コロナウイルス感染症の影響や対応策の変更、「MD&A」における新型コロナウイルス感染症の影響による経営方針・経営戦略の見直し等、前年度の有価証券報告書に記載した内容から重要な変更があった場合には、四半期報告書において、当該変更の具体的な内容を記載することが求められています。

さいごに

投資家等に向けた開示書類を作成する開示業務は、年間を通じて複数の書類を継続的に作成する業務です。短信、四半期報告書は決算後45日以内の開示でスケジュールが非常にタイトであったり、有価証券報告書等はルールの把握・アップデートを必要とする専門性が必要な業務となりますが、投資家や株主に資する書類であり、会社を経営していくうえで、意義が高いものといえます。

当社におきましても上場会社様の管理部より決算開示サポートを依頼頂く事が多くあります。特にコロナ禍においてリモートワークを中心に経理業務を実施し、かつ開示期限も迫る中で体制変更下でも期限を遵守し、専門的内容にも対応するため、また正確性担保のために新規にご依頼頂く事例も複数発生しました。各種開示書類の作成に精通した公認会計士を適材適所に配置してアウトソース支援を受けることにより、開示書類のミスや重複を防ぎ、開示実務の効率化を実現できている事例が増えてきています。

また、開示業務は管理部の財務報告プロセスの最終工程であるため、開示に不備が生じると開示体制の見直しが急務となりますが、決算開示スケジュールに追われている場合の多くはその前工程に改善すべき要素がある可能性が高い点にも留意が必要です。具体的には、1.単体決算業務⇒2.連結決算業務⇒3.監査対応業務⇒4.開示業務のそれぞれにおいてどこがボトルネックとなっているかにつき見極めたうえで適切な改善を実施する必要があります。

会社毎に異なる部分は勿論ありますが、2.連結決算業務改善は以下の手順となります。開示業務の改善を検討する際には以下の論点についても同時に検討し、一番効果が大きい箇所から改善を進めることが効果的です。


【連結決算業務の改善】
① 子会社からの連結パッケージ回収プロセスの改善を図ります。
子会社から取り寄せるべき情報を適時かつ正確に取り寄せられるよう、連結パッケージの改善、スケジュール体制の見直し等の体制整備を実施します。また、必要に応じて子会社の内部監査を実施し、子会社決算の正確性を確保するとともに、決算に必要な子会社情報を直接入手します。


② 親会社の連結財務諸表作成プロセスを改善します。
子会社財務諸表を連結入力するうえでの組替表の作成、内部取引消去、資本連結仕訳作成及び検証を通じて連結精算表作成までのプロセス一巡を見直し、標準化、効率化します。また、連結キャッシュ・フロー計算書は特に属人的対応が多いためフォーマット化やシステム連携を進めます。連結プロセスにつき、月次決算による準備やシステムを有効活用し、複数担当者による実施を可能な体制を構築します。


③ 勘定科目・外注先・システム統一、業務フロー標準化等により子会社の管理部レベルの底上げを実施します。
連結決算業務がコントロールできない原因の一つに子会社において上場会社が求めるスケジュールでの連結情報が提供できないため、1社がボトルネックとなり全体に遅延や二重作業を起こすことが挙げられます。よって根本的には仕組みによる改善と外注先などのサポートをデザインして子会社管理部レベルの底上げを図ることが有用です。子会社の管理情報が適時に入手できるようになると財務会計面のみならず、連結経営管理に役立つ資料作成・数値管理を実現できます。

経理・財務部門が抱える課題を解消し、現場から経営層までを強力サポートする方法とは?

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