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決算早期化における管理会計のポイント、課題点や対策のコツ

決算早期化における管理会計のポイント、課題点や対策のコツ

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東京証券取引所の2020年3月期の集計(※)によりますと2020年3月期決算は新型コロナウィルス感染症の影響を大きく受け、当取引所に上場する会社については、決算発表までの平均所要日数が43.4日となり、全体の61.4%にあたる会社が前年同期の所要日数を上回る結果となったようです。
Withコロナの時代における決算の早期化について考えてみましょう。
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決算早期化とは?

決算早期化とは、その名のとおり企業において決算開示までの期間を早めることです。
上記集計結果では、決算発表日が昨年より何日遅れたかという点では、ほとんどが1日~5日でした。
当取引所の決算短信・四半期決算短信作成要領等(※)には、「決算期末後30日以内の開示が、より望ましい」とされていることもあり、多くの企業がコロナ禍で決算手続きに制約がある中でも「早期決算」への意識は強いことがうかがわれます。
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・決算早期化の目的

企業にとって、「決算早期化はなんのためか」という問いには、さまざまの角度からの答えがあります。

  • 経営者がタイムリーな意思決定をするために
  • 投資家や金融機関の意思決定速度を上げるために
  • 消費者の嗜好にいち早く対応するために

確かに、決算早期化によって結果的に内・外部からの信頼を確かなものにするねらいはあると言えます。
しかし、これら以外に決算業務の軽減、つまり業務効率化の視点から決算早期化を目指すという見方も考えられます。

決算とは、月次、四半期、個別決算、連結決算等の各決算を指します。また、外部報告用のデータのみならず、内部報告用の管理会計デーも含まれます。これら決算に係る年間の社内工数だけを考えても膨大なものになります。

そこで、決算早期化ニーズに応えることが、逆に、必要十分な決算業務を見極め、効率の良い業務フローに変えることにつながると考えられます。

例えば、外部への決算開示が1日遅くなることで、その経済効果を算定することは難しいですが、決算業務を1日早く終えることで、少なくとも1日分の決算要員の人件費は計算できるように、決算早期化が業務改善の契機になりうると考えられます。

決算早期化の阻害要因?

決算早期化を阻害する原因も種々考えられます。

  • 手戻り作業が多い
  • 担当者レベルの差が大きい、又は担当者の属人的スキルやノウハウに頼っている
    などは経理部門だけでなく、どこの部門にもありがちな悩みでしょう。

決算早期化に特化した場合の阻害要因には2つの「片寄り」があります。

  • 部門の片寄り
    決算時期には、経理部門のみが忙しいという現象があります。
    決算とは経理部門だけの業務ではなく、現場の各部門、取引先からの連絡や報告との連携で成り立っています。経理部門だけに決算早期化の阻害要因があるわけではありません。
    したがって、決算早期化を考えるのであれば、「組織的、全社的に」取り組む必要があります。
  • 期間の片寄り
    月末月初など特定の期間だけに業務が集中し、決算時にはそれがピークに達するという現象があります。四半期ごとにしているものを毎月にできないか、月末の作業を毎週に分散できないかなど、業務の見直しによって作業の山や谷を極力なくし、決算時にしかできないような作業だけにしておくべきでしょう。

決算早期化におけるメリット?

決算早期化によるメリットとは、決算早期化の目的とやや重複しますが、外せない項目が2点あります。

  • 最新の財務情報を適切なタイミングで開示し、投資家にアピールできる
    大企業になるほど3月決算の割合が増える(※)ため、投資家への開示のタイミングを逃さないことは重要です。
  • 決算早期化のために業務効率化が進む
    短期間に正確なデータを報告するための管理会計を含めた決算における業務プロセスを確立できます。

※「決算期月別法人数|国税庁」が表示されます

決算早期化の実現に有効な対策

決算早期化における有効な対策としては、まず次の2つを検討すべきでしょう。

  • 業務プロセスの見直しと管理
  • ICT活用

・決算早期化を成功させるポイント

業務プロセスの管理とは、関係諸部門とともに策定した「決算スケジュール」を共有し、精緻なスケジュールによりタスク管理を行うことです。各プロセスの責任者を明確にし、期日どおりに完了させるのです。
さらに決算日以降の作業量を減らすために、業務の前倒しや平準化により日頃のルーチン作業を見直し特定の部門や特定の期間への「片寄り」をなくすことです。

全社的なICT活用はいうまでもありませんが、業務システムと会計システムの連携を自動化しておき、上流データの修正がシステム的に財務データに即時に反映するシステムを準備しておくことです。
決算データとは当期の業績だけでなく、管理会計のデータも含めて当期の業績を評価したものです。
したがって、原価計算や予算管理など表には出てこないけれど、縁の下の力もちである管理会計データを効率的に作成するためICT活用は必須と言えます。
会社の規模にあったERPのような統合型システムを導入し、一気通貫したシステム運用をすることで合理的なデータ活用ができます。

おわりに:決算早期化と管理会計の関係

どんなに業務プロセスを改善しても、どんなに進んだシステムを導入しても、実は決算の作業は地味なものです。決算データは、残高の確認、データのエントリー、各種チェック、上層部への報告や説明とどれをとっても結局は地道な作業の積み重ねからできています。
これらの現状を皆で丹念に拾い上げ、統合し取捨選択を繰り返して、業務プロセスを見直します。そして、そのプロセスに合ったICT活用による「管理された会計」の中でこそ、決算の早期化が実現すると言えるでしょう。

税理士コメント

業務プロセスの見直しにあたっては、まず、現状の作業フローを作成し、それをもとに決算早期化のための方策を検討していきます。業務プロセスの合理化にあたり、各部署の業務に手慣れたベテラン職員が持っている技術や知識の中には、言葉にして説明するのが難しいものもあります。「暗黙知」と呼ばれる知識です。
経験や勘などに基づき、人に説明することが難しい業務を、単にマニュアルとして記述しても活用されずに終わってしまいます。そこは、熟練者と時間を共有し、共に体験し、体得する部分もでてくるかと思います。
しかし、決算業務に必要な暗黙知は、今後はAIやRPAによってほとんどは解決されていくのかもしれません。

【税理士プロフィール】
税理士・CFP・認定経営革新等支援機関
岡 和恵
大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。
システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士やフィナンシャルプランナー資格を取得。
2019年より税理士事務所を開業し、税務や会計に関するライティング業務も開始。
図や表などを多用したわかりやすい執筆を心掛けています。

公認会計士コメント

決算業務では基本的に毎期同じような作業を行う為、ルーティンワークになりがちです。作業をルーティン化することで、担当者は毎年熟練度を上げることができ、業務効率も高まるでしょう。
しかし、ルーティンワークには「業務の見直しを行わなくなる」という欠点があります。一度決めたワークフローは、必要がない限り見直される機会を失うのです。
特に下位スタッフの作業はマネージメント層の目が行き届きづらいため、必要のない作業が潜んでいる可能性があるでしょう。決算早期化では、このようなワークフローの見直しも有効になります。
「なぜこの作業が必要なのか」といった視点で、今のワークフローを見直してみるのも良いかもしれません。

【公認会計士プロフィール】
公認会計士・税理士
 藤沼 寛夫
2014年:EY新日本監査法人
2018年:東京共同会計事務所
2019年:藤沼公認会計士事務所 開業
2020年:アカウントエージェント株式会社 設立

アカウントエージェント株式会社:https://a-agent.co.jp



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