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IFRSでの勘定科目体系

 中田 清穂(なかた せいほ)

グループ会計方針が出来上がると、次のステップとして、IFRSベースの財務諸表を作成する上での勘定科目を決めることになります。

IFRS担当者の多くは、従来の勘定科目体系をそれほど変える必要はないと考えているようです。

しかし、ことは単純ではないのです。

IAS第1号「財務諸表の表示」第54項には、財政状態計算書に掲記すべき最低限の項目として、以下の項目をあげています。

a. 有形固定資産
b. 投資不動産
c. 無形資産
d. 金融資産
e. 持分法で会計処理されている投資
f. 生物資産
g. 棚卸資産
h. 売掛金及びその他の債権
i. 現金及び現金同等物
j. 売却目的保有資産と処分グループに含まれる資産
k. 買掛金及びその他の未払金
l. 引当金
m. 金融債務
n. 当期税金の対象となる負債及び資産
o. 繰延税金負債及び繰延税金資産
p. 売却目的保有に分類される処分グループに含まれる資産
q. 資本に表示される非支配持分(日本の少数株主持分)
r. 親会社の所有者に帰属する発行済資本金及び剰余金

以上、18項目だけです。

日本では、連結財務諸表規則だけでも、連結貸借対照表に記載すべき勘定科目として50科目以上が明記されています。
有形固定資産については、以下の5科目ですね。

  1. 建物
  2. 機械装置及び運搬具
  3. 土地
  4. 建設仮勘定
  5. その他

EUの開示例をみるとやはり、「有形固定資産」という一つの項目で表示されているケースが非常に多く見られます。

それでは、IFRSでは、有形固定資産に関する勘定科目は、従来の日本の連結財務諸表規則に準拠したレベルの勘定科目で決算手続きを行い、最終的に提出する連結貸借対照表で表示するレベルをIAS第1号に示されている「有形固定資産」に組み替えれば良いのかと言うと、必ずしもそうはならないのです。

有形固定資産については、IAS第16号「有形固定資産」の第73項に以下の規定があります。

財務諸表には、有形固定資産の種類ごとに次の事項を開示しなければならない。
(a) 減価償却累計額控除前帳簿価額を決定するために用いられた測定基礎
(b) 採用された減価償却方法
(c) 採用された耐用年数または償却率
(d) 期首および期末の減価償却累計額控除前帳簿価額および減価償却累計額
(e) 期首および期末の帳簿価額の調整表

注目すべきは、「有形固定資産の種類ごとに」です。

2014年6月17日に提出されたダイムラー・アー・ゲーでは、(c)を以下のように開示しています。

建物および構築物 10~50年
技術装置および機械 6~25年
その他の装置・工場・事務所設備 3~30年

2014年5月15日に提出されたルノーでは、(c)を以下のように開示しています。

建物 15~30年
特殊工具 2~7年
機械装置・工具器具(プレス設備を除く) 5~15年
プレス設備 20~30年
その他の有形固定資産 4~8年

同じ自動車メーカーなのに「有形固定資産の種類」が全然違いますね。

連結財政状態計算書(貸借対照表)では、両社とも「有形固定資産」と表示されているのですが、注記されている「資産の種類」の内容が違うのです。

これはつまり、決算手続きを行うレベルでの有形固定資産関連の勘定科目が、2社の間で異なっているということを意味しています。

IASやIFRSで明確な規定や具体的な例示がない場合には、概念フレームワークに従う必要があります。
概念フレームワークでは、「財務諸表の利用者の意思決定に役立つような開示」をすることが基本的な考え方として示されています。
「財務諸表の利用者の意思決定に役立つような開示」とは何か、「財務諸表の利用者が意思決定しやすい注記」にするにはどうすればよいか。
これは、各企業が自ら決めなければならないのです。
だから企業によって表示内容が違ってくるのです。

したがって、従来の日本の連結財務諸表規則や実務指針などの制度で示されている勘定科目のままでは、IFRSベースの開示が適切にはできなくなる可能性が高いのです。

これは勘定科目マスターを複数持つかどうかという観点で、個別会計システムの要件に影響を与える可能性があるかどうかを確認すべきポイントにもなるでしょう。 また、固定資産システムから個別会計システムへインターフェイスする際の自動仕訳で付与される勘定科目について、日本基準用とIFRS用とで異なる勘定科目にする必要性も出てくるでしょう。

以上

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