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膨大な注記への対応

 中田 清穂(なかた せいほ)

IFRSでは、注記に記載すべき情報が膨大になるので、ただでさえ現在の決算業務が厳しい中、重大な課題になります。

工数が大幅に増加するだけでなく、形式やレベル感など、その内容も単純には決められないので、頭を悩ませることになります。

IFRSベースの注記を作成する上で参考になるのは、以下の資料です。
(1) 金融庁のひな型
(2) 大手会計事務所の開示例
(3) 日本の先行開示事例
(4) EUのIFRS適用会社の開示事例

上記資料を参考にする上で重要なポイントは以下です。
(a) 根拠条文が示されているか
(b) 開示項目が「必須なのか、任意なのか」を判別すること
(c) 財務諸表本表と整合性をもたせるのか、マネジメント・アプローチによるものなのかを判別すること
(d) 定量情報や定性情報をどのように表現したらいいのかをイメージできること

開示の実務では、無駄な開示はしたくないでしょうし、かといって、開示もれは避けたいところです。

(1)の金融庁のひな型には、根拠条文が記載されていて、マネジメント・アプローチによる場合もそれとわかる表現がされています。
しかし、必須項目が網羅的に表現されてはいないようです。
また、(d)のイメージのしやすさという点でも物足りないと思います。
金融庁の開示例は、以下のサイトから入手できます。
http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20091218-1.html

(2)の大手会計事務所の開示例は、各監査法人のサイトで無料で入手できる場合が多いようです。
筆者が大手監査法人のいくつかの開示例をレビューして最も参考になると評価したのが、あずさ監査法人(KPMG)の開示例です。
最も参考になると評価した最大のポイントは、(a)から(d)の全てのポイントを満たしている点です。
特に開示例の前に、根拠条文を明記した上で、その開示要求の解説をわかりやすく説明しています。
あずさ監査法人のサイトにあるKPMGの開示例は、以下のサイトで無料で入手できます。
http://www.kpmg.com/jp/ja/knowledge/article/ifrs-guide-to-financial-statements/pages/default.aspx

(3)の日本の先行開示事例はまだ数社しかありませんが、開示の内容はその粗密において、相当バラつきがあります。
その中で、筆者が最も参考になると評価しているのが、日本板硝子の有価証券報告書です。
他社と比べて、基準の開示要求の主旨をきちんと理解して、形式的な開示ではなく、投資家の意思決定に重要と思われる項目はきちんと開示しているように見受けられます。
また、開示の程度も、具体的にしすぎて細かすぎるようなこともなく、逆に全く具体性がないかといえば、そうでもなく、ある程度開示している項目の程度がうかがい知れるようなレベルに感じました。
現在の担当者は相当理解力があり、センスの良い方だと感じました。
日本板硝子の2012年3月期の有価証券報告書は、以下のサイトから入手できます。
http://www.nsg.co.jp/ja-jp/investors/ir-library/securities-reports

(4)のEUの開示事例は、かなりの数に上りますが、やはりバラつきが激しいので、どれか一つを参考にするというのは、難しいところです。
したがって、同業他社の数社分を集めて、いろいろな開示事例を比較して、開示のレベルや基準の開示要求の主旨を理解するための参考にすると良いでしょう。

以上のように、IFRSの開示(注記)は、その種類が多い上に、一つひとつについて、何を開示すべきか、どのように開示すべきか、どのレベルまで開示すべきかを、自社で決定することが必要ですし、さらにこれまで開示したことのないものばかりです。

したがって、まずは
① 自社のひな型を早めに作成し、
② 親会社のデータでだけでも一度作ってみて、
③ そしてある程度開示のボリュームと難易度をつかんだ後で、子会社にRP(Reporting Package)に入力してもらって、連結ベースの開示につなげる
といった流れが良いと思います。

EUでも2005年にIFRSが導入された際には、この注記の開示にかかる工数が最も大きく、想定以上に大変だったと言われています。
また、多くの漏れや間違いが発生したようです。

IFRSへの対策は、まずは基本財務諸表に関する項目の理解や分析から入りますが、開示の検討が相当後回しになることが多いようですので、自力で対応するにしても、監査法人にアドバイザリーを依頼するにしても、開示の検討がなおざりにならないよう気をつけていただきたいと思います。

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