公認会計士 中田清穂のIFRS徹底解説
中田 清穂(なかた せいほ)
2015年6月IFRS財団は、“Financial Reporting Standards for the World Economy”を公表しました。
この資料では、今年6月現在での、世界の国・地域におけるIFRSの適用状況が、以下の表でまとめられています。
この表を見ると、IFRSを適用していない国として、日本、スイス、インド、タイ、アメリカ、中国などが白抜きで表現されています。
この表の説明として、以下の記載があります。
ただ、中国については、中国の会計基準は実質的にIFRSにコンバージェンスされているという理解を示しています。
アメリカについては、2007年の"SEC Concept Release"、2008年の"Roadmap"、2012年の"Staff Report"を例示しながら、まだ強制適用と任意適用の検討中であるとの理解を示しています。
それでは、日本についてはIFRS財団はどのように理解をしているのでしょうか。
それを示す記載箇所が以下です。
これを見ると、IFRSの任意適用企業数が、3年足らずで10社から85社に激増していることが強調されています。
さらに、30社がIFRSに移行することを検討していることまで表現されています。
この30社は、正式表明しているのではなく、連結短信でIFRS適用に向けて前向きな表現をした企業でしょう。
日本国内でも、日本経済新聞などの報道では記事になったりしていますが、まだ正式にまとめられたものではありません。
いわば「勇み足」とも感じられる表現です。
ここで推察できるのは、今の日本の状況を、IFRS財団は大変好ましく受け止めており、まだ適用していない国・地域(具体的には、アメリカや中国)へのプレッシャーとして利用しているのではないかということです。
また、すでにIFRSを強制適用している100を超える国・地域にも、日本がどんどんIFRSに近づいているということは、とても心強いことだろうと思います。
IFRS財団にとって、日本の動向は、非常に重要なことがらなのだと感じられます。
最後にこのレポートで気になったのは、現在完成間近と言われている「修正国際基準(JMIS)」について、全く触れられていないということです。
今回参考にしたIFRS財団のレポートは、こちらのリンクから参照できます。
中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。