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第42回 「丸紅の初度適用(短信からの初度適用)」|IFRS徹底解説

第42回 「丸紅の初度適用(短信からの初度適用)」|IFRS徹底解説

 中田 清穂(なかた せいほ)

IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」では、23項以降で、「IFRSへの移行についての説明」を求めています。

いわゆる「IFRSへの移行に関する調整表」(以下「IFRS移行調整表」)です。

「IFRS移行調整表」は、「資本」と「包括利益」の2つの項目で、以下の表のタイミングについて作成し、開示する必要があります。

有価証券報告書で初めてIFRSの開示を行う場合:

この場合、「IFRS移行調整表」を有価証券報告書で開示する必要があります。

  移行日 前年度 当年度
資本の調整表 必要 必要 不要
包括利益の調整表 不要 必要 不要

翌期の四半期報告書には開示する必要はありません。

四半期報告書で初めてIFRSの開示を行う場合:

この場合、各四半期の四半期報告書すべてに「IFRS移行調整表」を開示する必要があります。
また、その年度末の有価証券報告書も「IFRS移行調整表」を開示する必要があります。
一番開示工数がかかるケースといえます。

なお、上記1と2のケースは、金融庁の以下のサイトの資料で示されている、「資料1」及び「資料2」のケースです。
http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20091201-1/17.pdf

アニュアルレポートで初めてIFRSの開示を行う場合:

アニュアルレポートで「IFRS移行調整表」を開示する必要があります。
しかし、有価証券報告書や四半期報告書には、「IFRS移行調整表」を開示する必要はありません。

このケースは、金融庁の以下のサイトで示された文書にあります。
http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20100616-2.html

連結決算短信から初めてIFRSの開示を行う場合:

有価証券報告書、四半期報告書及びアニュアルレポートのいずれにも、「IFRS移行調整表」を開示する必要はありません。

丸紅は、IFRS適用した際に、以下のようなスケジュールで開示しました。

(1) 2013年5月8日: 2012年度連結決算短信(米国基準)公表
(2) 2013年6月21日: 2012年度有価証券報告書(米国基準)提出
(3) 2013年8月7日: 2012年度連結決算短信(IFRS)公表
 (IFRSベースの有価証券報告書は作成していない)
(4) 2013年8月7日: 2013年度第1四半期連結決算短信(IFRS)公表
(5) 2013年8月14日: 2013年度第1四半期報告書(IFRS)公表

「IFRS移行調整表」は、(3)の2012年度連結決算短信(IFRSベース)にのみ開示されていて、それ以降の四半期報告書や有価証券報告書には一切、「IFRS移行調整表」が開示されていません。

このケースについては、金融庁のサイトで触れられているものが見当たりません。
丸紅は、上記3のアニュアルレポートで金融庁が認めた方法について「類推適用」したものと思われます。

IFRS対応プロジェクト最前線 Part18:馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット(2012/4/11)
http://www.knowledge-nw.co.jp/syuukan20120411.html
でも説明した通り、有価証券報告書や四半期報告書は、金融庁への提出書類であり、同じ情報であっても、現場での工数が大きく異なることが多いので、何を開示するのかは非常に重要です。

これからIFRSを適用する企業は、「どの文書でIFRSを始めて開示するのか」ということが、非常に重要なポイントであることを理解して、無駄な工数を極力抑えて欲しいです。

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