日本の会計・人事を変える。”もっとやさしく””もっと便利に”企業のバックオフィスを最適化。スーパーストリーム

開発費の償却費は原価算入するべきか?

 中田 清穂(なかた せいほ)

今回は、開発費を資産計上した場合、毎期償却を行っていくことになりますが、この償却費を製造原価に含めるべきかどうかについて解説します。

開発費は「無形資産」なので、IAS第38号「無形資産」の規定により処理をする必要があります。

IAS第38号第99項には、以下の規定があります。

償却は、通常は費用として認識される。しかしながら、資産に内包された将来の経済的便益が、他の資産を生産する過程で吸収される場合もある。そのような場合、償却費は他の資産の取得原価の一部を構成し、その資産の帳簿価額に含まれる。例えば、ある製造工程に使用される無形資産の償却額は、棚卸資産の帳簿価額に含まれる。

償却は、通常は費用として認識される。』という文章の意味は、無形資産の償却費は、通常全額がその期の期間費用として取り扱われる、という意味です。
もう少しわかりやすく説明すると、無形資産の償却費は、通常、販売費及び一般管理費などに計上され、製造原価としては取り扱われない、という意味です。

次に、『資産に内包された将来の経済的便益が、他の資産を生産する過程で吸収される場合』という文章の意味は、無形資産としての利用価値が、他の資産を生産することにある場合という意味です。
ここももう少しわかりやすく説明すると、製品などの資産を生産することによって、無形資産を持っている意味がでてくるケースです。

そして、『そのような場合、償却費は、他の資産の取得原価の一部を構成し、その資産の帳簿価額に含まれる。』ということなので、無形資産の価値が、製品を生産することで意味を持つ場合には、その無形資産の償却費は、製品等の棚卸資産の製造原価に含める必要があるということになります。

そしてこの条文の最後には、『例えば、ある製造工程に使用される無形資産の償却額は、棚卸資産の帳簿価額に含まれる。』という表現で、製造工程に使用される無形資産の償却額が、棚卸資産の原価に含めるケースを例としてあげています。

この条文を根拠にして、日本の監査人が、「開発費の償却費は、反証がない限り、製造原価に含めるべきだ」という主張や指導をしているケースもあるようです。

従来莫大な開発費を費用計上していた企業の中には、開発費を資産計上し、その償却費を全額製造原価に含めてしまうと、製品の製造単価が大幅に増加してしまう可能性があるでしょう。
さらには、個別財務諸表は日本基準で作成しなければならないので、原価計算について、開発費の償却費を含まない原価計算と、これを含む原価計算の2通りの結果を算出しなければならない可能性も高くなります。
さらには、これら異なる原価計算の結果について、トップ・マネジメントを含む社内で、大混乱が発生する可能性もあります。企業にとって非常に重要な「製品原価」が複数になるのですから、混乱するのは目に見えています。

つまり、開発費の償却費を製造原価に算入するということは、企業にとって一大事なので、軽々に判断するべきではないということです。
より慎重に考える必要があるでしょう。

私は、開発費の償却費について、単純に全額製造原価に算入することは適切ではないと考えています。

「開発活動の目的」、すなわち「開発が何のために行われたのか」が重要だと思います。

開発活動が、生産スピードの向上や仕損品の発生を抑制するための活動であれば、その開発活動の成果は、『ある製造工程に使用』されると言えるでしょう。
このような場合には、当然その開発費の償却費は製造原価に含めるべきでしょう。

しかし、開発活動が、製品のデザインや性能のアップなど、製品の販売を促進するための活動であれば、その開発活動の成果は、『製造工程に使用』されるわけではなく、製品の販売にあたって使用されると言えるでしょう。
このような場合には、その開発費の償却費は、製造原価に含めるべきではないでしょう。

結局、開発のための費用を、活動の目的によって分類集計する手間が発生しますが、いたずらに製品原価を膨らませたり、原価計算の二重計算をしたりする必要がなくなることを考えれば、きちんと分類集計して、適切な対応をした方がよいと判断するべきではないでしょうか。

以上

関連記事