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第9回 「上場有価証券の税務上の評価損について」|有価証券の期末評価方法

第9回 「上場有価証券の税務上の評価損について」|有価証券の期末評価方法

 アクタス税理士法人

最近の経済不況に伴い、保有している有価証券について多額の含み損を抱える企業も多いことと思われます。多額の含み損は決算に与える影響も大きいですが、利益の生じている企業にとっては節税を図る機会でもあります。しかし、評価損を損金算入することについて明確な指針がないため、有価証券の発行会社が法的整理に入るかまたは会社を清算するまで見送られてしまっていたのが現状です。
そのなか平成21年4月、国税庁から評価損の損金算入する判断指針として「上場有価証券の評価損に関するQ&A」が発表されました。上場有価証券の評価損の損金算入に当たっては、基本的には保有目的や個別銘柄ごとの状況を踏まえ、その適否を判断することになります。

有価証券の期末評価方法

有価証券は保有目的により評価方法が異なります。

参考資料


※売買目的有価証券とは、短期的な価格変動を利用して利益を得る目的で取得する有価証券のうち一定の要件満たすものをいいます。

有価証券の評価損が計上できる場合

売買目的有価証券は時価法による期末評価が法定評価方法であり、期末時点の時価が帳簿価額より低い場合に評価損の損金計上を行います。売買目的外有価証券の評価損は,一定の事実が生じている場合に、損金算入が認められます。

売買目的外有価証券 判断事由 具体的事由
上場有価証券等
(令119-13-1~3に掲げる有価証券)
時価評価額が著しく低下した場合 ①期末における価額が帳簿価額の概ね50%相当額を下回ること
②近い将来回復が見込まれないこと(「回復可能性」)
上記以外の有価証券 発行する法人の資産状態が著しく悪化した場合 ①発行法人が破産手続、更生手続等の開始決定等の事実が生じた場合
②1株当たりの純資産価額が、取得時の1株当たりの純資産価額の概ね50%相当額を下回ること

回復可能性の判断基準

上場有価証券の評価損が計上できる具体的事由の『回復可能性』については、明確な基準はありませんでしたが、今回の国税庁から発表されたQ&Aで指針が示されました。

  • 過去の市場推移や市場環境の動向、発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準が示される限りは、税務上その基準は尊重されることになりました。
  • 一般的には株価が過去2年間にわたり50%以上下落した場合には損金算入が認められるといわれていますが、必ずしも過去2年間にわたって50%以上の下落がなければ損金算入が認められないということではありません。
  • 回復可能性の合理的は判断として専門性を有する客観的な第三者の見解があれば合理的な判断の根拠とすることができます。

Q&A

Q.当社の保有する関連会社株式(上場株式)の株価が、事業年度末において帳簿価額の50%相当額を下回ることとなりました。当社は、当該関連会社株式の株価は回復の見通しがないと判断し、決算において関連会社株式の評価損を計上することにしました。
この評価損については、税務上、損金の額に算入することは認められますか?

株価の回復の見通しがないという判断が、合理的な判断基準により示される場合には、損金の額に算入する事が認められると考えられます。
一般的に、上場有価証券の評価損は、株価が過去2年間にわたり帳簿価額の50%程度以上下落した状態でなければ損金算入が認められないといわれますが、当該状況に該当しないと、必ずしも損金算入が認められないというものではありません。
この合理的な判断基準については、下記に示すような見解等を基準にする事が考えられます。

  • 法人の側から、過去の市場価格の推移や市場環境の動向、発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準が示される場合。
  • 専門性を有する第三者の証券アナリストなどによる個別銘柄別・業種別分析や業界動向に係る見通し、株式発行法人に関する企業情報などを用いて、当該株価が近い将来回復しないことについての根拠が示される場合。

Q.当社は、監査法人の会計監査を受けています。関連会社有価証券(上場株式)の期末時の評価のため、株価の回復可能性の判断について、監査法人のチェックを受けながら一定の形式基準を策定したいと考えており、また、策定した基準は今後も継続的に使用する予定です。このように策定した基準に基づき、関連会社株式の評価損を損金算入することとした場合、税務上、合理的な判断基準によるものと認められますか?

株主や債権者などの利害関係者の保護のために財務情報の信頼性を確保する責務を有する独立の監査法人のチェックを受けたものであれば、客観性が確保されていると考えられます。さらに、この基準が継続的に適用されるのであれば、そのような基準に基づく判断は恣意性が排除されていると考えられるため、税務上の損金算入の判断としても合理的なものと認められます。
しかし、監査法人等による関与であっても、その関与が経営についてのコンサルタント業務のみを行うものや、会計参与や税理士による関与の場合は、利害関係を有する第三者の保護のために行われる監査には当たらないため、合理的な基準に基づく判断とは認められません。

Q.当社では期末時点において合理的な判断基準に基づいて株価の回復可能性を判断した上で、その株式の評価損を損金算入することとしました。翌事業年度以降に株価の上昇

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