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第11回 「事業承継税制 贈与税の納税猶予」|税務会計業務のポイント

第11回 「事業承継税制 贈与税の納税猶予」|税務会計業務のポイント

 アクタス税理士法人

平成21年度税制改正において、非上場株式等に係る相続税の納税猶予に加え、贈与税の納税猶予制度が創設されました。これにより、贈与時に税負担なく株式を承継することが可能となり、事業承継の新たな選択肢が広がったといえます。ただし、制度の適用にあたっては厳しい要件が付されていることから、その適用に当たっては慎重を要し、計画的に行うことが求められます。

贈与税の納税猶予制度の概要

非上場会社を経営していた親族から、後継者が贈与によりその株式等の全部を取得し、経営を引き継ぐ場合には、その株式等(発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでの部分)にかかる贈与税の納税が猶予されます。


贈与税の納税猶予制度の概要

非上場会社を経営していた親族から、後継者が贈与によりその株式等の全部を取得し、経営を引き継ぐ場合には、その株式等(発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでの部分)にかかる贈与税の納税が猶予されます。

贈与税の納税猶予制度のポイント

1. 納税猶予を受けるためには継続すべき要件があります

→ 贈与後5年間に、次の状況に該当する場合には納税猶予が打ち切られます。

  1. 後継者が会社の代表でなくなった場合
  2. 雇用の8割以上を維持できなくなった場合
  3. 株式を譲渡した場合 等

→ 贈与後5年経過後も株式を譲渡した場合には、譲渡した株式に対応する贈与税額の納税猶予が打ち切られます。この場合には、税額とその期間に係る利子税を納付しなければならないため、多額の納税資金が必要となります。

2. 納税が猶予される贈与税額及び利子税額に見合う担保を、税務署に提供する必要があります

→ なお、この特例の適用を受ける株式等のすべてを担保提供した場合には、贈与税額及び利子税額に見合う担保の提供があったとみなされます。

3. 適用後、先代経営者(贈与者)が亡くなった場合には、「相続税」の納税猶予制度への移行が可能です

→ 先代経営者(贈与者)が死亡したときには、納税猶予分の贈与税が免除されます。贈与税の納税猶予の適用を受けた株式は他の相続財産と合算して相続税を計算することになりますが、一定の要件を満たせば「相続税の納税猶予」の適用を受けることができます。

4. 相続税は、贈与時の価額で計算されますので、株価が上昇する場合には有利です

→ 上記3.において、相続税の課税対象となる価額は、贈与時の価額です。そのため、相続時の株価が贈与時の株価より上昇しているときは有利になりますが、相続時の株価が下がれば不利となります。

5. 後継者(受贈者)が死亡した場合にも納税猶予分の税額が免除されます

→ 後継者(受贈者)が死亡したときには、納税猶予分の贈与税が免除されますが、この株式等を含めて相続税を計算することになります。

Q&A

Q.この制度はいつから適用されますか?
贈与税の納税猶予については、平成21年4月1日以降の贈与から適用されます。

Q.後継者である私は、先代と血縁関係がないですが、この制度を適用できますか?
後継者が贈与者と血縁関係になくても、親族であればこれらの適用を受けることが可能です。親族とは、配偶者、6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。たとえば、娘の婿が事業を承継する場合、養子縁組などを行わなくても、これらの制度を受けることができることになります。

Q.この制度を適用するために必要な手続きはありますか?
この制度の適用を受けるためには、経済産業大臣及び税務署に対し手続きが必要です。
経済産業大臣には、事前に『中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律』に基づき、計画的な承継に係る取り組みを行っていることにつき「経済産業大臣の確認」を受ける必要があります。また贈与税の申告期限までに「経済産業大臣の認定」が必要です。申告期限後5年間は、毎年報告書の提出が必要となります。
税務署には、贈与税の申告期限までに申告書の提出はもちろん、申告期限後5年間は毎年「継続届出書」の提出、その後も3年毎に届出書の提出が必要となります。

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