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第12回 「修繕費と資本的支出の区分」|税務会計業務のポイント

第12回 「修繕費と資本的支出の区分」|税務会計業務のポイント

 アクタス税理士法人

修繕費と資本的支出の区分は、実態に基づき判定を行うことが原則ですが、判定に当たっては、微妙な点も多く、実務では判断に迷うことが多い内容であると思われます。また、税務調査においては指摘されやすい事項でもあり、修繕費と資本的支出の判定には注意が必要です。

1.資本的支出と修繕費


2.資本的支出と修繕費の形式的基準による判定チャート


(注1)修繕費と資本的支出の区分が明らかでない支出額については、継続適用を要件として、下記の方法により金額を算定することが出来ます。
修繕費となる金額(A):支出額×30%と前期末取得価額×10%のうちいずれか少ない金額
資本的支出となる金額(B):支出額-Aの金額

【Q&A】

Q.会社所有の固定資産が台風による大雨で被害を受け、その固定資産について復旧工事をしました。この場合の資本的支出と修繕費の区分はどうすればよいのでしょうか?

災害等により被害を受けた固定資産(以下「被災資産」という。)について支出した金額については、資本的支出と修繕費の区分に関して、特例があります。
(1)被災資産につき、その現状を回復するための費用 ・・・修繕費
(2)被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のための費用
・・・法人が修繕費として処理をしている場合は、修繕費
(3)(1)又は(2)に該当するものを除き、資本的支出であるか修繕費であるか明らかでないもの
・・・支出額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出として処理をしている場合には、その処理が認められます。
(4)被災資産の復旧に代えて資産の取得をし、又は特別の施設を設置した場合 ・・・資本的支出

Q.当社は3月決算法人です。このたび、防犯対策の一環として、建物の窓全部にアルミの格子を取り付ける工事をしており、総費用は130万円です。当期の3月に1F部分の取付け工事が完了し、18万円支払いました。残りの112万円は工事が完了する翌期に支払う予定です。当期に支出した18万円は修繕費として処理してよいでしょうか?

建物の窓にアルミ格子を取り付ける工事は、アルミ格子を建物に物理的に付加するものであり、資本的支出に該当します。しかし、当期に工事が完了した部分は18万円であり、一の修理・改良等に要した金額が20万円未満ですので、修繕費として処理することができます。
すなわち、2以上の事業年度にわたり、工事が行われる場合は、各事業年度ごとに要した金額で判定することとなります。
なお、当然ですが、このケースでは1F部分のアルミ格子の取り付け工事が完了していることが必要です。

Q.当社の近隣地に高層ビルが建設されました。この高層ビルの建設によりテレビが映らなくなったので、ビル業者と交渉しアンテナの背を高くするため38万円の補償金を受け取り、感度の良いアンテナの取替え及び支柱を高くする工事を行いました。この工事にかかる費用は32万円です。この場合の工事費用・補償金はどのように処理すればよいでしょうか?

感度の良いアンテナへの取替え(性能のアップ)ですので、資本的支出に該当するとも考えられます。しかしながら、電波障害、日照妨害等による機能の低下があったことにより補償金の交付を受け、その補償金により固定資産の取得又は改良を行った場合には、機能復旧のために支出したと認められる部分の金額は修繕費等として損金算入することができます。
このケースでは、補償金として受け取った38万円を雑収入として計上し、工事費用32万円を修繕費として計上することになります。
なお、補償金を受け取った事業年度と工事費用を支払った事業年度が異なる場合で、補償金を受け取った後、固定資産の取得又は改良することが確実であるときは、受け取った補償金を仮受金とし、工事費用を支払った事業年度で収益と費用を対応させる処理も認められています。

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