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第75回 「贈与税の取扱について」|贈与税の仕組み

第75回 「贈与税の取扱について」|贈与税の仕組み

 アクタス税理士法人

贈与税の仕組み

贈与税は個人から財産の贈与を受けた場合に、贈与を受けた者が負担する税金です。贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から、基礎控除110万円を控除した残額に税率を掛けて計算します。これを暦年課税制度と呼びます。



贈与税の税率は超過累進税率となっており、下図のような速算表を用いて贈与税額を計算します。平成27年より贈与税の税率構造が変更されました。

  1. 最高税率が50%から55%へ引き上げられました。
  2. 直系尊属(祖父母や父母など)からその年の1月1日において20歳
     以上の者(子や孫など)への贈与財産(特例贈与財産)については特例税率での課税となります。

贈与の成立要件と注意点 

贈与とは当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思表示をし、相手方がこれを受諾することによって成立する契約をいいます。したがって、双方の合意が成り立って初めて贈与は成立します。贈与契約書の作成は必須条件ではありませんが、対外的に贈与の事実を証明するためには、贈与契約書を作成することが望ましいです。さらに、その贈与契約書には贈与者、受贈者の双方が自署し、贈与合意の意思を明確に表明しておくことも大切なことです。

贈与税の特例措置

贈与税については、次世代への資金サポートなどを考慮し、非課税措置や優遇措置の規定が用意されています。

種類 内容
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税 平成24年1月1日から平成31年6月30日までの間に、20歳以上で、その年の合計所得金額が2,000万円以下の人が、両親・祖父母等から住宅取得等のための金銭の贈与を受けた場合には、一定の金額を基礎控除額に上乗せした額まで非課税になります。
教育資金の一括贈与に係る非課税 平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、父母・祖父母から30歳未満の子や孫が教育資金を一括して贈与を受けた場合には、1,500万円まで非課税になります。
結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税 平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に、20歳以上50歳未満の子や孫が結婚・子育て資金を一括して贈与を受けた場合には、1,000万円まで非課税になります。
贈与税の配偶者控除 婚姻期間20年以上の夫婦間で住宅又は住宅を購入するための金銭の贈与を受けた場合、贈与税の申告をすることで2,110万円までは贈与税がかかりません。

Q1.贈与の特例に「相続時精算課税制度」があると聞きますが、どのような制度なのでしょうか。

A1.60歳以上の父母等から、20歳以上の推定相続人である子や孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる制度です。この制度を選択すると、累計2,500万円までの金額は贈与税の課税価格に算入されません。2,500万円を超える部分について一律20%で贈与税が課されます。
この制度はその名の通り、相続時に精算する制度であり、相続発生時にはそれまでに贈与した財産の価額を相続財産にすべて加算し相続税を計算し、そこから既に課された贈与税を控除することになります。一度この制度を選択すると暦年課税制度の適用が受けられなくなるため、選択にあたっては慎重な判断が必要となります。

Q2.扶養義務者から生活費や教育費として受けた金銭にも贈与税が課税されるのでしょうか。

A2「扶養義務者」相互間における「生活費」や「教育費」の贈与で、通常必要と認められるものについて贈与税は課されないことになっています。これは、日常生活に通常必要な費用を、扶養義務に基づいて贈与されたものについてまで税金を課することが適当でないためです。
通常必要と認められるものとは、贈与を受けた者(被扶養者)の需要と贈与をした者(扶養者)の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産となります。
例えば、子の学費や仕送りを親が負担するなどの、ごく一般に行われる行為が該当するものになります。

Q3.数年間分の「生活費」又は「教育費」を一括して贈与を受けた場合、贈与税の課税対象となりますか。

A3.「生活費」又は「教育費」の贈与は必要な都度直接これらの用に充てるためにされた場合は非課税となります。ただし、一括して贈与を受けた数年間分の生活費又は教育費がその用途に使用されなかった場合等には、その部分は贈与税の課税対象となります。なお、一括して贈与を受けた場合においても一定の「教育費」については、「教育資金の一括贈与に係る非課税」の特例が設けられています。

Q4.現金を贈与する場合、贈与契約を結ぶ以外にどのような点に気をつければいいでしょうか。

A4.贈与の合意を確認するための贈与契約書を締結するほか次のような点に注意してください。

  1. 贈与の記録が残るように、預金口座からの「振込」で行うほうが望ましい。
  2. 受贈者の預金通帳や届出印は受贈者本人が管理保管し利用する。
  3. 贈与契約書を自署するとともに、印鑑も同じものを使いまわさない。
  4. 受贈者の受贈額が110万円を超える場合には、翌年3月15日までに贈与税の申告を行う。
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