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第87回 「設備投資に対する優遇措置について」|税務会計業務のポイント

第87回 「設備投資に対する優遇措置について」|税務会計業務のポイント

 アクタス税理士法人

法人や個人事業者が、生産性の高い設備や地球環境に配慮した設備などに投資した場合に、税制上の優遇措置として特別償却制度や税額控除制度が設けられています。多くは、租税特別措置法上の制度となりますので適用期間に制限があります。適用が、平成29年3月までの取得資産に対するものも多いので、充分に活用していただくために、今一度ここでご確認ください。

設備投資に対する優遇措置まとめ

生産性の高い設備に対する優遇措置として「生産性向上設備投資促進税制」があります。中小企業者の取得する一定の機械装置等については、「中小企業投資促進税制」があり、生産性の向上を図る設備については更に「上乗せ措置」が設けられています。太陽光設備に対する投資は「グリーン投資減税」の対象です。

  生産性向上設備
投資促進税制
中小企業等
投資促進税制
グリーン投資減税
通常分 上乗せ措置
いずれか選択 特別償却 50%
(建物、構築物は25%)
30% 100%
(即時償却)
30%
税額控除 4%
(建物、構築物は2%)
7% 10% 7%
(車両は対象外)
投資対象資産

生産性の向上に資する一定の設備

  • 機械装置
  • 工具、器具備品
  • 建物、建物附属設備
  • 構築物
  • ソフトウェア

※中古資産は対象外

一定の金額要件を満たす設備

  • 機械装置
  • 工具
  • 器具備品
  • ソフトウェア

※中古資産は対象外

左記のうち生産性の向上に資するもの

※中古資産は対象外

 

  • 自家発電用の太陽光発電装置
  • 風力発電設備
  • バイオマス利用装置
  • 電気自動車など

※中古資産は対象外

適用要件
  • 工業会の証明書 または経産省の認定が必
  • 平成29年3月31日までに取得した資産について適用
  • 法人は資本金1億円以下が対象
  • 資本金3千万円超の法人は特別償却のみ
  • 平成29年3月31日までに取得した資産について適用
  • 工業会の証明書 または経産省の認定が必要
  • 法人は資本金1億円以下が対象
  • 資本金3千万円超の法人は税額控除が7%
  • 平成29年3月31日までに取得した資産について適用
  • 一定の資産については証明書が必要
  • 資本金1億円超の法人は特別償却のみ
  • 平成30年3月31日までに取得した資産について適用

※特別償却・・・『取得価額 × 一定率』を費用にできる制度
 税額控除・・・『取得価額 × 一定率』の税金を控除できる制度

固定資産税の軽減措置

人口減少、国際競争の激化など中小企業者を取り巻く事業環境の厳しさが増している中、中小企業者による経営力向上に対する取組を支援するため、平成28年7月に中小企業等経営強化法が施行されました。

この法律は中小企業の稼ぐ力を支援するもので、「経営力向上計画」を策定し、事業分野ごとの担当省庁からその計画の認定を受けると、固定資産税が3年間、2分の1に軽減される措置や、信用保証枠の拡大などの金融支援を受けることができます。固定資産税で史上初の設備投資減税であり、赤字企業にも税金を削減する効果のある制度となっております。

「経営力向上計画」とは、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上、設備投資等により事業者の生産性を向上させるための取り組み内容を記載した事業計画です。この計画策定・認定にあたっては認定支援機関などによるサポートも受けられます。なお、固定資産税(償却資産税)の軽減措置の概要は以下のとおりです。

対象者 資本金1億円以下の会社、個人事業主など
必要な手続き 工業会等による証明書を設備メーカーを通じて取得する
事業主管大臣に当該設備の取得を含む「経営力向上計画」と証明書を提出し、認定を受ける
上記の認定書、申請書、証明書のうち市などを自治体に提出する
対象設備 販売開始から10年以内のもので、旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するもの
160万円以上の機械装置であること
軽減措置 3年間、固定資産税が1/2に軽減される

Q&A

Q1.設備投資を検討していますが、適用期限の延長は予定されていますか

A1.「生産性向上設備投資促進税制」と「中小企業投資促進税制」の両制度については、期限内の設備投資を後押しするため、適用期限の延長はなく、平成29年3月31日をもって廃止されます。設備投資計画の経済産業局の確認を受けるために時間を要する場合等もありますので、これらの制度の適用を受ける場合には、期限に間に合うように余裕をもった対応をする必要があります。

なお、「中小企業投資促進税制」は、経済産業省の平成29年度税制改正要望におきまして、対象設備の追加と2年間の延長の要望が出ております。今後の税制改正の動向に注意してください。

Q2.太陽光発電設備については優遇税制の適用を受けられなくなったのでしょうか

A2.「グリーン投資減税」の対象設備の見直しにより、対象設備から売電用の太陽光発電設備が除外されましたが、自家消費用の太陽光発電設備については、引き続き「グリーン投資減税」の対象設備とされています。また、売電用の太陽光発電設備については、所定の要件を満たせば「生産性向上設備投資促進税制」の適用を受けられます。

Q3.「固定資産税の軽減措置」を受けるために必要な計画申請には、どの程度時間がかかりますか

A3.「経営力向上計画」の計画申請から認定までの標準処理期間は30日(計画に記載された事業分野が複数の省庁の所管にまたがる場合は45日)とされています。設備の取得後、年末までに認定が受けられない場合、減税の期間が2年となりますので、余裕をもってご提出ください。

Q4.購入ではなくリースの場合も「固定資産税の軽減措置」の対象となりますか

A4.ファイナンスリース取引(所有権移転リース取引及び所有権移転外リース取引)については対象となりますが、オペレーティングリース取引については対象外となります。

Q5.設備投資に対する支援策は、税制上の支援以外にどのようなものがありますか

A5.中央省庁などが、企業の設備投資等に対する支援として補助金や助成金を支給する制度があります。設備投資以外にも創業支援や雇用奨励のための補助金や助成金など、様々な活動に対して支援がありますので是非ご活用下さい。補助金等の支援策は、中小企業基盤整備機構の運営サイトで検索できます(https://j-net21.smrj.go.jp/)。なお、代表的な補助金等は次のものになります。

代表的な補助金制度 制度の内容
ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金 革新的なサービス開発・試作品開発・生産性プロセス改善を行う中小企業者の設備投資等の支援制度
再生可能エネルギー補助金 太陽光、バイオマス、地熱等の熱利用設備や発電設備に対する投資等の支援制度
企業立地補助金 地域産業の活性化を図るため企業の本社や工場などを誘致するための補助金制度
アクタス税理士法人のサイトはこちら

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