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第89回 「ふるさと納税と義援金」|確定申告が不要なワンストップ特例制度

第89回 「ふるさと納税と義援金」|確定申告が不要なワンストップ特例制度

 アクタス税理士法人

ふるさと納税とは、自分が生まれ育った自治体、災害などで支援したい自治体や特産品がもらえる自治体など、ふるさとに限らず自分が納めたい自治体へ納税できる制度です。「納税」と言う言葉がついておりますが、実はご自身が選んだ自治体に寄付を行い、後日「寄付金控除」を受けることになります。総務省の調べによりますと、平成27年度のふるさと納税の実績は、約1,653億円で、対前年度比約4.3倍となっております。特産品をいただいたりするお楽しみもありますので、ぜひ皆さんも活用してみてください。

ふるさと納税について

ふるさと納税とは、自分が選んだ自治体に寄付を行った場合に、寄付した金額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です。ただし、全額控除される金額には、一定の上限があるのと、その上限は収入や所得によってことなりますので注意が必要です。
なお、控除を受けるためには、ふるさと納税を行った翌年に自治体から発行を受けた寄付の証明書や受領書、専用の振込用紙の払込控などを添付して原則確定申告を行う必要があります。

ふるさと納税について

確定申告が不要なワンストップ特例制度

確定申告が不要な給与所得者等がふるさと納税を行う場合、確定申告を行わなくとも、ふるさと納税の寄付金控除を受けられる仕組みが「ふるさと納税ワンストップ特例制度」です。この特例制度は、①1暦年中のふるさと納税の支出先が5団体以内で、②各ふるさと納税先の自治体に「特例の適用に関する申請書」を提出した場合に適用が可能となります。この特例の適用を受ける場合には、所得税からの控除は一切行われず、寄付をした年の翌年6月から納めることになる住民税額から全額が控除されることになります。

なお、5団体を超える自治体にふるさと納税をした場合や、ワンストップ特例を申請したにもかかわらず、医療費控除等の確定申告を行うこととなった場合には、ふるさと納税分も合わせて確定申告する必要がありますので注意が必要です。この特例は、平成27年4月1日以降のふるさと納税から適用されています。

ふるさと納税としての義援金

個人の方が次の1~3の義援金を支払った場合には、寄付金控除の対象となる「特定寄付金」に該当し、確定申告を行うことで所得税の軽減を受けることができます。これらの義援金は、「ふるさと納税」に該当することになりますので、個人住民税の寄付金税額控除の対象となります。

  1. 被災地方公共団体に対する義援金
  2. 被災県下の災害対策本部に対する義援金
  3. 日本赤十字社や中央共同募金会の義援金受付口座への支払など、最終的に被災地の地方公共団体に支払われることが明らかな義援金

企業が義援金を支出した場合
企業が支払った上記義援金は、支出額の全額が損金の額に算入されます。また、このほか、被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用や被災された取引先の復旧過程において復旧支援を目的として行われる次のものは寄付金や交際費ではなく、損金に算入されます。

  1. 取引先に対して支出する災害見舞金等の費用
  2. 取引先に対する売掛金や貸付金等の免除による損失
  3. 取引先に対する低利または無利息の融資により生じる通常の利息との差額

Q&A

Q1.いくらふるさと納税をしても、自己負担は2,000円になるのですか

A1.ふるさと納税は2,000円の自己負担額で寄付をすることができます。ただし、受けられる寄付金控除の額には上限があり、この上限はふるさと納税をされた方のふるさと納税をされる年の収入や所得控除額等の状況により変わりますので、必ずしも自己負担額2,000円でふるさと納税が行えるわけではありません。総務省のホームページなどにふるさと納税額をシミュレーションができる計算シートが提供されていますので、金額の試算にあたってご活用ください。例えば、給与所得者で独身の方の上限額の目安は、給与収入400万円で約42,000円、500万円で約61,000円となっております。

Q2.個人がふるさと納税をした場合、かならず確定申告が必要ですか

A2.ふるさと納税ワンストップ特例制度により、確定申告が不要な給与所得者等が、1暦年中のふるさと納税の支出先を5団体以内におさえて、ふるさと納税先の自治体に「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」を提出している場合には、確定申告が不要となります。

ただし、例えば熊本地震における一定の義援金はふるさと納税に該当しますが、地方公共団体に対して直接寄付金を支出していないものについてはワンストップ特例制度の適用はできません。すなわち、日本赤十字社や中央共同募金会、日本政府等に対する義援金については、募金団体に対する義援金等が最終的に被災地方団体又は義援金配分委員会等に拠出されることが募金要綱、募金趣意書等で明らかにされているものであることが必要であり、さらに、確定申告書の提出が必要となります。義援金をふるさと納税の対象としたい場合には、自治体に直接寄付することをお勧めします。

Q3.被災地域の救援活動をしているNPO法人に義援金を支払った場合はどうなりますか

A3支払ったNPO法人が国税庁から認定を受けた「認定NPO法人」であり、義援金がその認定NPO法人の行う特定非営利活動に係る事業に関連するものであるときには、その義援金は「認定NPO法人に対する寄附金」に該当します。よって、個人の方は寄附金控除(所得控除)又は寄附金特別控除(税額控除)の対象となり(選択適用)、企業は損金算入限度額の範囲内で損金に算入されます。

Q4.企業が寄付をした場合、「企業版ふるさと納税」には該当しないのですか

A4.平成28年税制改正により、地方公共団体が作成し、国から認定を受けた「地域再生計画」に記載された、「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に対して企業が行う寄附については、現在の支出全額を損金算入する取扱いに加えて、1法人事業税、2法人住民税、3法人税から税額を控除する税額控除制度が導入されました。

これにより企業が適用対象となる寄附を行った場合は、寄付金額の約6割相当の税額負担を軽減することができます。熊本地震における義援金は、この「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に対して企業が行う寄附には該当しませんので、税額控除制度の適用はありません。

 

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