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第103回 「仮想通貨に関する所得税の取り扱い」|税務会計業務のポイント

第103回 「仮想通貨に関する所得税の取り扱い」|税務会計業務のポイント

 アクタス税理士法人

仮想通貨の概要

ビットコインに代表される仮想通貨(コイン)は2017年に大きく価値が上昇しました。日本、海外において仮想通貨の取引所が新設され、そこに多くのコインが上場し、売買の取引が行われてきました。2017年は1年で200倍以上に価値が上がったコインなどもあり、この1年で大きな利益を得た方もおられます。
このような状況で、個人が仮想通貨を売却又は使用すること等により生じる利益について、国税庁から取扱が公表されました。仮想通貨に係る利益は、原則的に公的年金等以外の雑所得とされ、総合課税として所得税が課税されます。そのため所得税の確定申告が必要となり、税率は超過累進税率が適用され、住民税率と合わせると最高55%での課税となります。
仮想通貨の概要

所得計算上の取り扱い

(1)収入が確定するタイミングと所得計算

取引の種類 収入計上時期 取得価額の求め方
 ①仮想通貨の円への換金損益  売却した時  原則:移動平均法
 例外:総平均法(継続して適用することが要件)
 ②資産の購入による損益  資産を購入した時
 ③他の仮想通貨と交換損益  交換した時


雑所得の計算は、総収入金額 - 必要経費
で求めます。仮想通貨の所得計算に当てはめると、仮想通貨を円に換金したときの収入代金 – その仮想通貨の円での購入代金
で求めるのが基本の形になります。求める所得は円で常に認識していくことになります。

①仮想通貨を円に換金した場合

保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、その売却価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。
(例)100万円で購入した4BTCの価値が上がり、2 BTC分を80万円で売却し、日本円に換金した。
     800,000円 - (1,000,000円÷4BTC)  × 2BTC = 300,000円(所得金額)
   【売却価額】  【1BTCあたりの取得価額】 【支払BTC】   ※BTC=ビットコイン

②仮想通貨で商品を購入した場合


保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合、その使用時点での商品価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。
(例)100万円で購入した4BTCのうち、0.5 BTCを使ってテレビを購入した。
     155,000円 - (1,000,000円÷4BTC)  × 0.5BTC = 30,000円(所得金額)
   【商品価額】  【1BTCあたりの取得価額】 【支払BTC】

③仮想通貨と仮想通貨の交換をした場合


保有する仮想通貨を使用して他の仮想通貨を購入する場合、その使用時点での他の仮想通貨の時価(購入価額)と保有する仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。
(例)100万円で購入した4BTCのうち、0.5BTCを使って、他の仮想通貨2ETHを購入した。
     600,000円 - (1,000,000円÷4BTC)   × 0.5BTC= 475,000円(所得金額)
   【他の仮想通貨の時価】【1BTCあたりの取得価額】【支払BTC】 ※ETH=イーサリアム

(2)損失が生じた場合の取り扱い


雑所得の金額の計算上生じた損失については、他の所得と損益通算することができません

また、生じた損失は来年以降に繰り越すこともできないため、来年以降の仮想通貨の利益に対して充当することもできません。仮想通貨で生じた損と益は通算することができます。また、仮想通貨以外の雑所得がある場合にも、雑所得内での通算は可能となります。

Q&A

Q1.仮想通貨を購入してそのまま保有しているだけでも課税されますか?

A1.
保有しているだけでは、利益が確定していません。そのため、保有による差益を認識する必要がありませんので、課税されません。


Q2.
本年の仮想通貨での利益は15万円でした。本年の確定申告で医療費控除を取るため確定申告を行います。仮想通貨利益については20万円以下なので申告しなくてもいいでしょうか?

A2.
医療費控除の適用を受けるために確定申告をするのであれば、仮想通貨の利益についても申告をする必要があります。

給与所得以外の所得が20万円以下の場合は確定申告を要しないこととなっていますが、20万円以下の所得について申告をしなくていいという規定ではありません。そのため、確定申告をするのであれば、仮想通貨の利益についても申告をする必要があります。

Q3.仮想通貨の所得区分は、雑所得しか考えられないのでしょうか?

A3.
事業所得者が、事業用資産として仮想通貨を保有し、決済手段として使用している場合、その使用時の損益については、事業に付随して生じた所得と考えられ、その所得区分は、事業所得となります。

その他、その仮想通貨の運用によって得られる収入によって生計を立てていることが客観的に明らかであるなど、その仮想通貨取引が事業として行われていると認められる場合にも、その所得区分は、事業所得となります。

余剰資金で仮想通貨取引を行っている場合は、やはり雑所得としての区分に該当することになります。

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