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第120回「消費税率引き上げ直前の確認事項」|区分記載請求書等保存方式以降の帳簿及び請求書等の記載と保存

第120回「消費税率引き上げ直前の確認事項」|区分記載請求書等保存方式以降の帳簿及び請求書等の記載と保存

 アクタス税理士法人

2019年10月1日より消費税率の引き上げと軽減税率制度が開始します。軽減税率制度の導入により、経理では税率ごとに区分して帳簿を記載する区分経理が求められ、さらに税率ごとに税込合計額を記載した請求書等の発行や保存が必要となります。開始まで半年を切った今、実務のポイントを再確認ください。

区分記載請求書等保存方式以降の帳簿及び請求書等の記載と保存

2019年10月以降「区分記載請求書等保存方式」が始まります。軽減税率の対象品目の売上げや仕入れ(経費)がある事業者は、下記の区分記載請求書等の発行やその保存、区分経理を行う必要があります。
また、2023年10月から適格請求書等保存方式(インボイス方式)が始まり、軽減税率対象商品などの販売をしているかどうかに関わらず、売手は、適格請求書等の交付が義務づけられます。一方、買手側は、仕入税額控除をするために、区分経理に対応した帳簿及び適格請求書等の保存が必要となります。

帳簿への記載事項
区分記載請求書等への記載事項
2019.10.1~2023.9.30
適格請求書等への記載事項
2023.10.1以降



①課税仕入れの相手方の氏名又は名称
②取引年月日
③取引の内容
④対価の額
⑤軽減税率対象品目である旨


①請求書発行者の氏名又は名称
②取引年月日
③取引の内容
④対価の額
⑤求書受領者の氏名又は名称
⑥軽減対象資産の譲渡等である旨
⑦税率ごとに合計した対価の額(税込み)
※⑥及び⑦の追加記載事項は受領者の追記可


区分記載請求書等の記載事項に加え
⑧登録番号
⑨税率ごとの消費税額及び適用税率
※「⑦税率ごとに合計した対価の
額」は税抜き又は税込みで記載

※国税庁「消費税軽減税率制度の手引」(平成30年8月)より

実務上の直前確認ポイント

新しい軽減税率の制度を理解していただくことも大切ですが、実務上は主に次のような事項を再確認ください。

  • 各種システム(販売管理、請求書発行、レジ、会計)の改修等の最終確認は済んでいるか
    区分記載請求書等の記載事項に漏れはないか、複数の税率に対応した処理ができるか、確認が必要。
  • 既存の契約書の価格や報酬条項の記載内容の確認は行ったか
    例えば、「54,000円(消費税込)」と記載の場合、10%になっても54,000円の請求となってしまう。
  • 自社に発生する経過措置取引の確認は行ったか
    経過措置により旧税率の8%が適用される対象取引は、必ず経過措置を適用する必要がある。
  • 店頭の値札やパンフレット等の価格表示についての対応や確認が完了しているか
    Webサイトなど、パンフレット以外の商品価格が表示されているものを確認し変更を行う。
  • 施行日(10月1日)をまたぐ取引や返品があった場合の対応などを会社内で共有しているか
    経過措置に該当しないネット販売の場合、申込日ではなく出荷日で税率が決まるなどの認識が必要。
  • 区分記載請求書が正しく発行できるか、適格請求書保存方式を見据えた準備を行っているか
    区分記載請求書の記載事項の最終確認を行い、適格請求書方式を見据えた準備も検討し始める。

Q&A

Q1.当社では、軽減税率対象商品の販売を行っていませんが今までどおりの請求書で良いでしょうか。

A1.ご質問のように、販売する商品が軽減税率の適用対象とならないもののみであれば、「軽減対象資産の譲渡等である旨」の記載は不要となり、今まで同様に課税資産の譲渡等の対価の額(税込価格)の記載があれば、結果として「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額」の記載があるものとなります。したがって、10月から貴社が発行する請求書の記載事項に変更はありません。

Q2.毎月20日締めで請求を行っている場合、9/21~10/20分の請求書には、旧税率の8%と軽減税率の8%が混在します。この場合の区分記載請求書等はどのような記載をすればよいでしょうか。

A2.9月30日以前の取引と10月1日以後の取引をひとつの請求書に記載する場合、例えば次のような内容を記載したものを発行することが考えられます。

  1. 旧税率の対象となる9月30日までの取引は、課税資産の譲渡等の対価の額(税込み)の合計額を記載
  2. 10月1日以後の取引の軽減税率対象品目には「※」などを記載
  3. 10月1日からの取引は、税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額(税込み)を記載
  4. 「※」が軽減税率対象品目であることを示すことを記載

※「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」平成28年4月(平成30年11月改訂)

Q3.標準税率(10%)適用の商品について、顧客から納得してもらえずに軽減税率(8%)分の代金しかもらえなかった場合、どのように消費税を計算したら良いのでしょうか。

A3.2019年10月以降の消費税の適用税率区分は法律に明確に規定されています。そのため顧客の同意が得られず軽減税率分の代金しかもらえなかったとしても、消費税の計算上は標準税率の対象とする必要があり、顧客からもらった代金を、標準税率適用の税込み価格として計算を行います。

Q4.キャッシュレス・消費者還元事業とはどのような制度ですか。

A4.2019年10月1日から9カ月間に限り、消費者が対象となる事業者の店舗にてキャッシュレス決済(クレジットカード、電子マネーなどの電子的決済)をした場合、消費者に対しそれぞれ下記率のポイントが還元されるという制度です。業種ごとに定められた資本金等の一定の要件に該当する中小・小規模事業者の営む店舗が対象で、参加を希望する事業者は事前の登録が必要です。

  1. 中小・小規模事業者の小売店舗…5%
  2. 中小・小規模事業者に該当するコンビニや外食店などのフランチャイズ店…2%
なお、①の中小・小規模事業者については、負担ゼロで決済端末の導入が可能(1/3を決済事業者、残り2/3を国が補助)および加盟店手数料を国が1/3ほど負担する制度となっています。

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