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令和2年度 税制改正(速報)

 アクタスマネジメントサービス㈱/アクタス税理士法人

12月12日に自民党から「令和2年度税制改正大綱」が公表されました。令和の時代になって初めての税制改正であり、その内容は、少子高齢化が進む中、人生100年時代に対応すると同時に、イノベーションの促進など中長期的に成長の底上げをするための支えとなる内容が盛り込まれました。目玉となる内容としては、法人課税では「オープン・イノベーション促進税制」や「連結納税制度の見直し」、個人所得課税では「NISAの拡充」などがあります。今回の税制改正の主要論点をズバリ解説します。
( member-column-zeimu-vol-img_zeimu43_006  増税  member-column-zeimu-vol-img_zeimu43_007  減税)

法人課税

法人課税では、イノベーション強化や5G時代に備える税制措置が講じられました。また、18年ぶりに連結納税制度が抜本的に見直され、グループ通算制度へ移行されるのが大きな焦点になっています。

項目 内容 適用期日等
オープン・イノベーション税制
【新設】
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○特定株式を取得・保有し、特別勘定の経理をすることで損金算入ができる【適用要件】次の全ての要件を満たす法人

  1. 特定事業活動を行う青色申告法人(※1)
  2. 特定株式(※2)を令和2(2020)年4月1日 ~ 令和4(2022)年3月31日までの間に取得し、事業年度末まで保有している
  3. 株式の出資払込は、1億円(中小企業者は1,000万円)以上
  4. 「特別勘定」の金額として経理する

※1 特定事業活動を行う
自らの経営資源以外の経営資源を活用し、高い生産性が見込まれる事業を行うこと又は新たな事業の開拓を行うことを目指す株式会社等をいう

※2 特定株式とは
産業競争力強化法の特定事業活動に資する事業を行う内国法人等の株式で経済産業大臣の証明があるもの

【損金算入額】
特定株式の取得価額の25%以下の金額
(その事業年度の所得の金額が限度)

【益金算入される場合】

  • 経済産業大臣の確認が取り消された場合
  • 特定株式の全部又は一部を売却等した場合
  • 特定株式につき配当を受けた場合
  • 対象法人が解散した場合など
令和2(2020)年4月1日~
令和4(2022)年3月31日
までに特定株式を取得
5G投資促進税制
【新設】
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○特定高度情報通信用認定等設備(第5世代移動通信システム)を取得等して、事業の用に供した場合の特別償却又は税額控除

【適用要件】次の全ての要件を満たす法人

  1. 青色申告法人であること
  2. 「認定特定高度情報通信等システム導入事業者(仮称)」に該当すること
【特別償却額または税額控除】
 特別償却:取得価額×30%
 税額控除:取得価額×15%(法人税額×20%
を限度とする)
特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の施行日~
連結納税制度から「グループ通算制度」へ移行 ○連結納税制度を見直し「グループ通算制度」へ移行
項目 制度の概要
納税主体 各法人が個別に計算と申告を行う
事業年度 現行と同様、親法人の事業年度に合わせたみなし事業年度となる
損益通算 ①欠損法人の欠損金額を所得法人の所得金額の比で配分し、所得法人で損金算入させる
②損金算入された欠損金額は、欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人においては益金算入する
欠損金の控除 ①欠損金の繰越控除の計算は、基本的に現行の制度と同様
②グループ通算制度の適用開始前の繰越欠損金を親法人も自己の所得の範囲内でのみ控除できるようにする
税額調整 研究開発税制と外国税額控除の適用については、現行と同様、グループ全体での税額控除の計算を行う
税率 ①通算グループ内の各法人の適用税率
②中小法人の軽減税率の対象となる年800万円は所得法人の所得金額の比で配分される
申告と納付 ①通算グループ適用の法人は、e-Tax申告が強制
②申告期限の延長特例による延長は原則2カ月
組織再編税制との整合性 ①開始や加入時の時価評価課税・欠損金の持ち込み制限等については組織再編税制と整合性をとる
②通算グループの開始や加入時の時価評価課税や繰越欠損金の切り捨て対象を縮小する
中小法人の判定の適正化 通算グループ内に大法人がある場合は、中小法人の特例を適用しない
地方税の取扱い 国税の見直しに併せて、所要の措置を講じる

※連結納税制度からの移行に関する経過措置が別途、講じられる

令和4(2022)年3月31日までの間に取得し、事業供用
大企業における税額控除の適用要件の見直し

○租税特別措置法上の特例の適用要件の厳格化

  1. 研究開発税制、地域未来投資促進税制、IoT投資税制、5G投資促進税制の適用のためにクリアすべき要件の1つである「設備投資要件」が見直しされる
    設備投資要件 国内設備投資額 > 減価償却費の総額×10% → 30%
  2. 所得拡大促進税制の適用のためにクリアすべき要件の1つである「設備投資基準」が見直しされる
    設備投資基準 国内設備投資額 > 減価償却費の総額×90% → 95%
大綱では適用期日等の具体的な明記なし
主要規定の延長措置

○交際費等の損金不算入制度(接待飲食費50%の損金算入も継続)(対象法人の見直し)

資本金等の額が100億円超の法人は、接待飲食費50%の損金算入の特例は除外される

○中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例制度(対象法人の見直し)
連結法人は除外される
常時使用する従業員数の要件を500人以下の法人に引き下げる

○中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻還付の不適用措置

令和4(2022)年3月31日まで2年延長

個人所得課税

個人所得課税の改正では家計の安定的な資産形成支援の観点からNISA制度の見直し・延長が図られます。そのほか、行き過ぎた節税と指摘されていた国外中古建物を利用した不動産所得の計算の見直しなども行われることになりました。

項目 内容 適用期日等
NISAの延長、拡充
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〇一般NISAとつみたてNISAの投資期間を 5 年延長
一般NISAは令和10(2028)年末まで、つみたてNISAは令和24(2042)年末まで投資できる

○新NISAは、2階建て構造
令和6(2024)年からの新NISAでは、投資対象商品や非課税限度額を見直す
原則として、1階部分で積立投資を行った場合に限り、2階部分を利用できる

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○ジュニアNISA は、令和5(2023)年末の期限をもって終了

新NISAは、令和6(2024)年より
低未利用土地等の譲渡所得の特別控除
【新設】
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○低未利用土地等に係る譲渡所得の特例

【適用要件】次の全ての要件を満たす

  1. 低未利用土地等であることについて市区町村長の確認がある
  2. 譲渡年の1月1日において所有期間5年超である
  3. 譲渡対価の額が500万円以下であること
  4. 配偶者、特別の関係がある者への譲渡でないこと
  5. 前年、前々年に分筆された土地等についてこの規定の適用を受けていないこと

【特別控除額】
長期譲渡所得の金額に対して100万円の特別控除

土地基本法等の一部を改正する法律(仮称)の施行日又は
令和2(2020)年7月1日の遅い日 ~
令和4(2022)年12月31日までの譲渡
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例
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○国外中古建物に係る損失の金額が生じた場合の取扱い
【適用要件】次の全ての要件を満たす

  1. 国外中古建物(※)を賃貸
  2. 不動産所得の金額の計算上、損失の金額が生じる

【必要経費不算入額】
その国外中古建物の減価償却費に相当する金額は、生じなかったものとみなす

○国外中古建物を譲渡した場合の譲渡所得の「取得費」の取扱い
国外中古建物を譲渡した場合の取得費の計算
取得費-償却費の額の累計額(生じなかったものとみなされた減価償却費相当額は除く)
=取得費の金額は大きく計上される
=譲渡所得の金額は小さく計上される

※ 国外にある中古建物のうち、減価償却費を計算する際の耐用年数を「簡便法」又は「見積った耐用年数(適切であることを証する書類の添付がないもの)」により計算しているもの

令和3(2021)年以後の各年において適用
所得控除の見直し

○未婚のひとり親に対する税制上の措置

  1. 未婚のひとり親に「寡婦(夫)控除」を適用する
  2. 寡婦(夫)控除について金額の見直しを行う

○国外居住親族に係る扶養控除の見直し

  1. 非居住者となっている親族の年齢が「30歳以上70歳未満」の者は、扶養控除の対象にならない
  2. ただし、その対象の親族が、「留学」「障害者」「生活費又は教育費を年38万円受けている者」に該当する場合、扶養控除は適用できる
令和2(2020)年分以後の所得税について適用

令和5(2023)年分以後の所得税について適用
その他

○配偶者居住権等に係る譲渡所得の取扱い
配偶者居住権等に係る譲渡所得の取得費の計算方法が明確にされた

○企業年金・個人年金制度等の見直しに伴う税制上の所要の措置
確定拠出年金制度等の制度見直しが行われた後も、現在の税制上の措置を適用することになる

大綱では適用期日等の具体的な明記なし

資産課税

資産課税においては、第三者への事業承継税制が検討課題に挙げられていましたが、見送られ、今回は特に大きな改正内容となりませんでした。

項目 内容 適用期日等
所有者不明土地等に係る固定資産税の課税
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○所有者不明土地等について現所有者による申告の制度化
市町村長は、登記簿等に所有者として登記等されている個人が死亡している場合、その土地・建物を現に所有している者に、固定資産税の課税に必要な事項を申告させることをできるようにする

○使用者を所有者とみなす制度の拡大

市町村は、一定の調査を尽くしても固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合、使用者を所有者とみなして固定資産税を課税することができることとする。

令和3(2021)年度以後の年度分について適用

令和3(2021)年度以後の年度分の固定資産税について適用

消費課税

項目 内容 適用期日等
法人の消費税の申告期限の特例
【新設】

○法人に係る消費税の確定申告書の提出期限について1月延長の措置

【対象法人】次の全ての要件を満たす法人

  1. 法人税に係る確定申告の提出期限の延長特例の適用を受けている
  2. 「消費税の確定申告書の提出期限を延長する旨の届出書」を提出している

※提出期限の延長がされた期間の消費税納付では、延長された期間に係る利子税の納付も必要となる

令和3(2021) 年3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間から適用
居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除の適正化
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○仕入税額控除の適正化

  1. 居住用賃貸建物(※)の取得等に対する課税仕入れについては、仕入税額控除の適用を認めない
  2. 仕入税額控除が適用されなかった居住用賃貸建物を一定期間内に住宅貸付け以外に供した場合や譲渡をした場合、仕入税額控除を増加させる調整計算を行う
    ※居住用賃貸建物とは
    住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって、高額特定資産(一の取引の単位につき、課税仕入れに係る支払対価の額が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産)に該当するもの
  3. 住宅の貸付契約において貸付用途が明らかにされていない場合であっても、建物の状況等から居住用に供することが明らかな貸付けについては、消費税を「非課税」とする
令和2(2020) 年10月1日以後の居住用賃貸建物の仕入れから適用

国際課税

項目 内容 適用期日等
子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避への対応

○子会社からの配当後、子会社株式を譲渡した場合の譲渡時の簿価の切り下げによる租税回避への対処
【適用要件】
特定関係子法人からの配当等の額>その子法人の株式等簿価×10%

【簿価の引き下げ】
その株式等の簿価-配当等の額のうち益金不算入相当額

※簿価の引下げを行うことで、譲渡益はより大きく、譲渡損はより小さく計上されることになり、租税回避への対処を図る

大綱では適用期日等の具体的な明記なし

その他

項目 内容 適用期日等
利子税・還付加算金等の割合の引下げ
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○利子税等の割合の引下げ

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※1 利子税は、所得税・相続贈与税の延納が認められた期間や法人税の提出期限の延長特例の適用を受けた期間について延滞税に代わり課されるもの

※2  延滞税については現行通りとなり、納税猶予等のケースにおいて改正されることになる

令和3(2021)年1月1日以後の期間に対応する利子税・還付加算金等について適用
納税等手続きの簡素化

○振替納税の通知依頼、ダイレクト納付の利用届出の電子化
「振替納税の通知依頼」「ダイレクト納付の利用届出」の提出がe-Taxにより申請等可能となる

○納税地の異動があった場合の振替納税手続きの簡素化
転居等により納税地を異動した場合に提出する「納税地の異動届出」に異動後も振替納税を行う旨を記載することで、振替納税が継続できるようになる

○準確定申告の電子的手続きの簡素化
電子署名について簡素化が図られる

※現況において、e-Taxのシステム上、準確定申告の提出が行えない状況であり、改善が期待される

令和3(2021)年1月1日以後に行う申請等から適用

令和3(2021)年1月1日以後に提出する異動届出について実施

令和2(2020)年分以後の準確定申告書を令和2年1月1日以後に提出する場合

電子帳簿等保存制度の見直し

○電磁的記録をデータのまま保存するための要件の緩和
電子取引を行った場合の電磁的記録の保存方法に次の方法を加える

  1. 既に発行者側でタイムスタンプが付された電磁的記録については受領者側でのタイムスタンプは不要
  2. 電磁的記録について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステム(訂正又は削除を行うことができないシステムを含む)において、その電磁的記録の授受及び保存を行う方法
    (受領者側で自由にデータ改変ができないクラウドサービスのシステム等を利用した場合を意味する)
令和2(2020)年10月1日から施行
今後の主要な検討事項

○年金課税については、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する

○金融所得課税の更なる一体化については、多様なスキームによる意図的な租税回避行為を防止するための実効性ある方策の必要性を踏まえ、検討する

○小規模企業等に係る税制のあり方については、引き続き、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する

○カジノから生じる所得にかかる適正な申告の確保等の観点から、関連する納税環境の整備について、IR事業の開業に向けて、今後検討する

○自社株式を対価とした公開買付け等に係る課税のあり方については、会社法制の見直しを踏まえ、組織再編税制等も含めた理論的な整理を行った上で、必要な税制措置について検討する

 

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