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第130回 「新型コロナウイルス関連支援策の追加情報」|税務会計業務のポイント

第130回 「新型コロナウイルス関連支援策の追加情報」|税務会計業務のポイント

 アクタス税理士法人

新型コロナウイルス感染症(以下「感染症」といいます。)の感染拡大に伴い、企業等への支援策が拡充や更新されております。感染症により休業せざるを得ない場合等について、厚生労働省から雇用調整助成金は、4月1日から6月30日までを緊急対応期間と位置付け特例措置が拡大されてます。また、感染症により納税や申告が困難となった企業への対応などが、国税庁から発表されております。

雇用調整助成金の緊急対応期間における特例措置

雇用調整助成金は、事前に労使間で休業協定を締結することが必要となっております。今回は、休業協定書等を提出する計画届は、事後提出が認められています。「計画届」と「支給申請」2つの手続きが必要です。

  特例以外の場合の雇用調整助成金 新型コロナウィルス感染症特例措置
緊急対応期間(4月1日から6月30日まで)
対象事業主
経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主
新型コロナウィルス感染症の影響を受ける事業主(全業種)
生活指標要件
3か月10%以上低下
1か月5%以上低下原則、計画届を提出する月の前月の、対前年比で確認することに注意
対象労働者
雇用保険被保険者
雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成金の対象に含める※「緊急雇用安定助成金」という別制度、別申請、別計算になることに注意
助成額
休業手当等の負担額に対する助成率2/3(中小)、1/2(大企業) 、ただし、1日1人当たり8,330円の助成を限度とする
休業手当等の負担額に対する助成率4/5(中小)、2/3(大企業)(解雇等がない場合【注】は9/10(中小)、3/4(大企業))、ただし1日1人当たり8,330円の助成を限度とする
支給限度日数
1年100日、3年150日
同左 + 上記対象期間(4/1~6/30)
計画届提出
事前提出
事後提出を認める(1/24~6/30まで)
被保険者期間
6か月以上の被保険者期間が必要
被保険者期間要件を撤廃
休業規模要件
短時間一斉休業のみ休業規模要件
1/20(中小)、1/15(大企業)
短時間休業の要件を緩和、併せて休業規模要件を緩和1/40(中小)、1/30(大企業)

【注】雇用維持要件として以下の要件を満たすこと
ア 1月24日から賃金締切期間(判定基礎期間)の末日までの間に事業所労働者の解雇等(解雇と見なされる有期契約労働者の雇止め、派遣労働者の事業主都合による中途契約解除等を含む。)をしていないこと 
イ 賃金締切期間(判定基礎期間)の末日における事業所労働者数が、比較期間(1月24日から判定基礎期間の末日まで)の月平均事業所労働者数と比して4/5以上であること

計画届の提出書類(事後提出が可能)
添付書類等
① 休業等実施計画(変更)届出 -
② 雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書 「売上」がわかる既存書類の写し
③ 休業協定書 (労組あり)組合員名簿(労組なし)労働者代表選任書
④ 事業所の規模を確認する書類 既存の労働者名簿及び役員名簿で可

支給申請時の提出書類
添付書類等
① 支給要件確認申立書・役員等一覧 計画届に役員名簿を添付した場合は不要
② (休業等)支給申請書 自動計算機能付き様式
③ 助成額算定書 自動計算機能付き様式
④ 休業・教育訓練実績一覧表 自動計算機能付き様式
⑤ 労働・休日の実績に関する書類 ア 出勤簿、タイムカードの写しなど
イ 就業規則または労働条件通知書の写しなど
⑥ 休業手当・賃金の実績に関する書類 ア 賃金台帳の写しなど
イ 給与規定または労働条件通知書の写しなど

※ 雇用調整助成金は令和2年5月上旬を目途に更なる拡充が行われる予定です。

拡充1.休業手当の支払率60%超の部分の助成率を特例的に10/10とする

中小企業が解雇等を行わず雇用を維持し、賃金の60%を超えて休業手当を支給する場合、60%を超える部分に係る助成率を特例的に10/10とする。

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拡充2.1のうち一定の要件を満たす場合は、休業手当全体の助成率を特例的に10/10とする

休業等要請を受けた中小企業が解雇等を行わず雇用を維持している場合であって、下記の要件を満たす場合には、休業手当全体の助成率を特例的に10/10とする。

新型インフルエンザ等対策特別措置法等に基づき都道府県対策本部長が行う要請により、休業又は営業時間の短縮を求められた対象施設を運営する事業主であって、これに協力して休業等を行っていること

○以下のいずれかに該当する手当を支払っていること

  1. 労働者の休業に対して 100%の休業手当を支払っていること
  2. 上限額(8,330円)以上の休業手当を支払っていること(支払率60%以上である場合に限る)

出典:令和2年4月25日 【別紙】雇用調整助成金の更なる拡充についてより)

感染症の影響や対応策などに関する税務上の取扱い

1.納税猶予制度

感染症の影響により、国税を一時に納付することができない場合、税務署に申請することにより、要件のすべてに該当するときは、原則として1年以内の期間に限り、猶予が認められます。担保の提供が明らかに可能な場合を除いて、担保は不要となり、延滞税は軽減されます。
なお、緊急経済対策に、感染症の影響により収入が減少した事業者に対して、延滞税が課されない「納税猶予の特例制度(Q1参照)」が盛り込まれ検討(4月24日段階)されておりますので、今後の動向にご注目ください。

2.申告・納付等の期限の個別延長制度

感染症に関して、例えば以下の理由により、申告書や納付手続に必要な書類等の作成が遅れ、本来の期限までに申告納付等を行うことが困難な場合、個別申請による期限延長が認められることとなります。

  • 顧問税理士等や経理担当部署の社員等が感染症に感染した又は濃厚接触者となった場合
  • 学校の臨時休業の影響や感染拡大防止のため企業が休暇取得の勧奨を行ったことで経理担当部署の社員の多くが休暇を取得していること
  • 感染症の拡大防止のため多数の株主を招集させないよう定時株主総会の開催時期を遅らせるといった緊急措置を講じたこと

Q&A

Q1.「通常の納税猶予」と「納税猶予の特例」の違いについて教えてください。

A1.「納税猶予の特例」は、令和3年1月31日までに納期限が来る国税について、感染症の影響により令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)の事業等収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少し、一時に納税を行うことが困難な場合、担保も延滞税も不要で1年間納税を猶予もしくは分割納付等できる特例です。
収入減少を伴っているときに利用できること、担保が不要で延滞税がかからないこと、すでに受けている「通常の納税猶予」を遡って特例に切り替えることができることなどが大きな違いになります。

Q2.当社は、子会社や下請け業者などの取引先に対して、感染拡大防止の取り組みとして、期間限定でマ スクや消毒液を無償で提供する予定です。税務上の問題はありますか?

A2.マスク等の無償提供が、感染症に関する対応として、緊急、かつ、流行が終息するまでの間に限って行われるものであり、取引先等がマスク不足等により業務遂行に支障が生じており、貴社の事業遂行にも直接的、間接的に影響があるときには、業務遂行上必要な経費と考えられますので、その提供に要する費用(マスク等の購入費用、送料等)は、通常の費用に該当します。

Q3.コロナウイルスの影響で業績が悪化しているため、役員給与の減額を考えています。年の中途で役員 給与を変更することは税務上問題ありませんか?

A3.感染症により業績等が急激に悪化して家賃や給与等の支払が困難となり、株主や取引銀行との関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状態にある場合には、業績悪化改定事由による改定として、事業年度の途中での減額が認められます。

Q4.テナントの要請により賃貸物件の賃料の減額を行った場合、減額分は寄附とされてしまいますか?

A4. テナント等において感染症の影響により収入が減少し、事業継続が困難な状況やそのおそれがあるときに、その状況に陥ったテナント等の復旧支援のために、相当期間内に賃料の減額を行う場合は、実質的に取引条件の変更として考えられるため、税務上の寄付金として取り扱われることはありません。

 

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