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第141回 令和3年3月決算の税務申告のポイント

第141回 令和3年3月決算の税務申告のポイント

 アクタス税理士法人

令和2年4月30日に通称「新型コロナ税特法」と呼ばれる税制が施行されております。
令和3年3月期の決算においては、この新型コロナ税特法の取扱いにも注意して対応する必要があります。
今回は、3月決算法人が、税額計算、申告納税、設備投資において注意すべき税制について、そのポイントをまとめました。
なお、これらは、3月以降に決算を迎える法人につきましても同様に適用されますので、その旨でご確認ください。

■税額計算関係

・青色欠損金の繰戻還付

中小企業者は、青色欠損金が生じた事業年度(欠損事業年度)において、その青色欠損金額を前1年以内に開始した事業年度(還付所得事業年度)に繰り戻して、法人税額の還付を請求することができます。
項目 内容
適用要件 還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度まで、連続して青色申告書を提出していること
還付金額 還付所得事業年度の法人税額×欠損事業年度の欠損金額/還付所得事業年度の所得金額
還付請求手続 確定申告期限までに還付請求書を提出
【制度上のポイント】(新型コロナ税特法)
〇令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する事業年度に生じた青色欠損金については、資本金が1億円超10億円以下の法人も利用可能となります。
※資本金が10億円以上の大規模法人による完全支配関係がある法人等は除かれます。

・賃上げ等促進税制の見直し(中小企業者等以外)

青色申告法人が以下の「賃上げ要件」と「設備投資要件」を満たした場合に、雇用者給与等支給額の前年度からの増加額の15%(法人税額の20%が上限)について、法人税額の控除を受けることができます。

適用要件 適用要件 令和2年3月31日以前開始事業年度  令和2年4月1日以後開始事業年度
賃上げ要件 雇用者給与等支給額が前年度より増加 雇用者給与等支給額が前年度より増加
継続雇用者給与等支給額が前年度比3%以上増加 継続雇用者給与等支給額が前年度比3%以上増加
設備投資要件 国内設備投資額が当期償却費総額の90%以上 国内設備投資額が当期償却費総額の95%以上
【制度上のポイント】
〇令和2年度税制改正により、「設備投資要件」について変更されています。
〇給与等支給額は、法人が支給する休業手当は含め、法人が受領する雇用調整助成金は控除します。
〇教育訓練費が一定の要件を満たした場合は、20%の税額控除となります。(法人税額の20%が上限)

■申告納税関係

・電子申告の義務化

3月決算の資本金1億円超の大法人は、電子申告が義務化となりますが、添付書類(財務諸表や勘定科目内訳書等)も含めて電子申告する必要があります。
【制度上のポイント】
○義務化対象法人が書面提出した場合、無申告扱いとなり、無申告加算税の対象となります。
○資本金1億円超であるか否かの判定は、事業年度開始の時になります。

・消費税の申告期限延長

令和3年3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間から、法人税の申告期限延長特例の適用を受ける法人は、課税期間末日までに「消費税申告期限延長届出書」を提出することにより、消費税確定申告書の提出期限を1か月延長することができます。
【制度上のポイント】
○令和3年3月期より適用を受けようとする場合、令和3年3月末日までに提出する必要があります。
○申告期限が延長された消費税については、延長期間に係る利子税を併せて納付する必要があります。

■税額計算関係

令和3年3月31日までに固定資産を取得等した中小企業者については、特別償却又は税額控除のいずれかを選択適用することができる3つの設備投資税制があります。
これらの税制は令和3年度税制改正により、一部要件の見直しのうえ延長、または他の税制に統合のうえ廃止されることが検討されています。
令和3年3月決算までは下記の既存制度が適用されますが、それ以降の決算期については、令和3年4月1日以後取得等した設備についての、要件見直しの詳細内容など、今後の税制改正情報にご注意ください。
  中小企業
経営強化税制
中小企業
投資促進税制
商業・サービス業・農林水産業
活性化税制
適用対象者 青色申告書を提出する中小企業者等で経営力向上計画の認定を受けたもの 青色申告書を提出する中小企業者等 青色申告書を提出する中小企業者等で認定経営革新等支援機関等による指導を受けたもの
対象設備 機械装置、工具器具備品、建物附属設備、ソフトウェアで生産性向上設備(A類型)、収益力強化設備(B類型)、デジタル化設備(C類型)のいずれかに当てはまるもの(特定経営力向上設備等という) 機械装置、測定工具・検査工具、一定のソフトウェア、普通貨物自動車、内航船舶 経営改善指導助言書類に記載された一定の器具及び備品、建物附属設備
いずれか
選択適用

特別償却 100% (即時償却) 30% 30%
税額控除 10%
(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%
7%
(資本金3,000万円以下に限る) 
7%
(資本金3,000万円以下に限る)
限度額 税額控除額は合計で法人税額の20%が上限(超える金額については1年間の繰越が可能)
【制度上の
ポイント】
デジタル化設備(C類型)が追加され、テレワークを導入するための設備も対象に追加 公的機関の確認・認定が必要ないため、対象資産を取得し、指定事業に利用する事で適用可能 「売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであること」について経営革新等支援機関等から確認を受けることが必要
令和3年度
税制改正に
よる見直し内容
「経営資源集約化設備(D類型)」を追加したうえで、適用期限の2年間延長 不動産業、商店街振興組合等の業種を追加したうえで、適用期限の2年間延長 対象業種を中小企業投資促進税制へ統合したうえで、廃止
調査レポート「なぜ経理/財務部門ではテレワークが進まないのか」

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