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日本企業をダメにする会計制度(第3弾) ~リース会計~

 中田 清穂(なかた せいほ)

今回は、日本のリース会計基準が、経営判断に悪影響を及ぼす可能性についてお話します。

リース会計基準は、日本基準とIFRSとでコンバージェンスが行われました。
その結果、ほとんど同じ会計基準になったと言われています。

日本基準でもIFRSでも、リース基準の要諦は、以下です。
たとえば、10年間使える車を10年間リース契約で取引した場合、10年後にはもう使い物にならないポンコツになっているのですから、いくら「リース取引なので、売買ではない」と言っても、実態は貸手が自由に使えるものではなくなっていて、貸手の資産として取り扱うのはおかしいし、逆に借手にとってはその車を使い倒すまで使うわけですから、借手の資産として取り扱うべきだという趣旨の規定です。

借手にとっては法的な所有権があるわけではないので、資産計上することに違和感がありますが、会計的な取扱いは法的な取扱いに基づくものではありません。

以下のケースで考えてみましょう。

(1) 銀行から1億円を借り入れて、製造装置を購入し、製品を生産して販売するケース。

(2) リース業者からリースで調達した製造装置で製品を生産して販売するケース。

(1) の場合は、製造装置の1億円と、銀行借入金の1億円が貸借対照表に計上されます。
(2) の場合、所有権がないからといって売買として取り扱わなければ、何も貸借対照表に計上されません。

その結果、(1)の「購入して」製造装置を利用した場合には、1億円の資産を使って利益がいくら得られたかがわかりますが、(2)の「リースで借りて」製造装置を利用した場合には、資産が何もないのに、利益が得られたような結果になります。

全く同じ資産を使っているのに、購入したのかリースで借りたのかの違いで、財務数値、特に資産効率の数値が大きく異なるのはおかしいでしょう。

リース会計基準は、そういった考え方からリース取引であっても、資産として計上しなさいという会計ルールにしてあるのです。

しかし、日本基準とIFRSでコンバージェンスが済んだといっても違いがあります。

それは、「300万円ルール」です。

日本のリース会計基準では、一つの物件が300万円以下なら資産として計上しなくても良いというルールがあります。
IFRSにはこのような規準はありません。

したがって、日本基準では、リース契約により、1台200万円の車両を営業用として1000台調達しても、1台300万円以下なのですべて資産としては取り扱わなくても良いことになっています。
1台200万円でも1000台もあれば、総額20億円です。
さらに、この20億円に相当する金額は、リース業者からの借入金と同じ意味を持ちます。
リース料には、リース期間にわたる金利部分も含まれていますよね。

ここで、リース料には金利部分だけでなく、その他のリース業者の管理コストなども含まれているのですが、損益計算書には、金利部分とその他の部分を分解して計上する取扱いにはなっていないので、通常金利部分も含めて「リース料」という項目(勘定科目)で計上されています。

そこで経営者の意思決定に悪い影響が出てくるのです。

すなわち、20億円の車両を利用して営業ができているにも関わらず、貸借対照表には資産が全く計上されず、おまけに金利がかかっていることも見えないのです。

この会社が銀行からの借入金が全くない場合には、社長は「うちの会社は無借金経営だ!!」などと威張っているかもしれません。
しかし、実態は、リース業者からの20億円の借入金があり、普通に銀行から借りるのよりも高い金利でリースによる利息を支払っているのです。

「有利子負債」と「利息コスト」は経営を圧迫する重要な財務数値ですが、その中にリースに関連する借入や金利を含めていなければ、経営者が知らないうちに、無駄な金利負担に圧迫されていることに気づかないことになるのです。

「資産効率」を上げるために、「購入」ではなく「リース」によって調達するといった考え方は、経営者にゆがんだ情報を与える罪な経理判断だと言えるでしょう。

以上

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