日本の会計・人事を変える。”もっとやさしく””もっと便利に”企業のバックオフィスを最適化。スーパーストリーム

中田版『IFRSの誤解』 子会社の会計方針の統一

 中田 清穂(なかた せいほ)

【誤 解】
子会社は、グループ全体で統一されたグループ・アカウンティング・ポリシーにすべて準拠しなければならない。
  ↓
【実 際】
子会社は、グループ全体で統一されたグループ・アカウンティング・ポリシーに準拠しない方が良い場合もある。

IFRSを連結ベースで適用する際に、実務上大きな課題となるのが、グループ・アカウンティング・ポリシーの統一的な展開です。
一般的に、連結対象となる子会社や持分法適用となる持分法適用関連会社は、すべて統一されたグループ・アカウンティング・ポリシーに準拠して、各社の個別財務諸表を作成する必要があると言われています。

しかし、以下の2つのケースでは、統一されたグループ・アカウンティング・ポリシーに準拠する必要はなく、逆に従来の会計処理のまま変えない方が良いと思われます。

以下、上記2つのケースについて説明します。

当該子会社や関連会社に重要性がない場合

子会社や関連会社の重要性については、いくつかの段階に分けて整理して考えることが重要でしょう。
その「段階」とは、「(a)連結範囲の検討段階」と「(b)個別財務諸表の取込(合算)の段階」と「(c)連結消去仕訳の段階」の3つです。

(a) 連結範囲の検討段階

まず、IFRSではすべての子会社を連結する必要はありますが、「中田版『IFRSの誤解』Part2:連結の範囲」で説明した通り、重要性のない子会社はそもそも連結する必要はありません。

(b) 個別財務諸表の取込(合算)の段階

しかし、連結対象から外すほど重要性が低いわけではないので、連結範囲に含めることとなっても、従来の会計処理で個別財務諸表を作成した場合と、IFRSベースによる会計処理で個別財務諸表を作成した場合で、グループ全体としての連結財務諸表には重要な影響を及ぼさない場合もあるいでしょう。
このような場合には、連結対象にはするものの、IFRSを厳密に適用させる必要はなく、当該子会社の従来の会計処理のベースで個別財務諸表を作成してもらい、その個別財務諸表を取り込む(合算する)だけで良いでしょう。
つまり、合算はするけれど、厳密にIFRSを適用したものにはしないのです。

(c) 連結消去仕訳の段階

(b)で、合算はするけれど厳密にIFRSを適用したものにはしないような場合には、少し乱暴ですが、連結消去仕訳としては、投資と資本の消去仕訳のみ行い、その他の連結消去仕訳(債権債務消去、損益取引消去や未実現損益消去など)は一切やらなくても良いのではないかと思います。

取引が親会社や他の連結対象子会社との取引に関するものである場合

統一されたグループ・アカウンティング・ポリシーを適用すると、従来の会計処理とは異なる会計処理をする必要がある場合があります。
例えば、IFRS第15号『顧客との契約から生じる収益』における「代理人」としての取引にあたる場合には、手数料部分のみの収益計上となり、仕入と売上の両建て計上ができなくなります。
この「代理人」とみなされるケースとしては、販売子会社のケースが多いと思われます。
販売子会社の活動としては受注活動がメインであり、在庫リスクもなく、販売価格も親会社が決定するような場合です。

しかし、当該販売子会社の製品仕入が親会社や他の連結対象子会社である場合には、最終的には連結手続の損益取引の消去仕訳で、消去対象となるので、販売子会社の個別財務諸表において、厳密にIFRSを適用する意味はありません。

それどころか、連結手続で損益取引の消去仕訳を作成する際に、販売側の収益計上額と購入側の手数料計上金額でうまく照合ができず、かえって連結手続が手間取ることになります。

したがって、このように最終的には連結手続で消去されるケースでは、統一されたグループ・アカウンティング・ポリシーを適用せず、従来通りの会計処理で仕入と売上の両建て計上を行い、連結手続で損益取引の消去仕訳を行うことで良いと思います。

関連記事