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第16回 「出向者給与の取扱い」|税務会計業務のポイント

第16回 「出向者給与の取扱い」|税務会計業務のポイント

 アクタス税理士法人

出向とは、従業員が自己の雇用先の企業(出向元法人)に在籍したまま、子会社や関連企業などの他の企業(出向先法人)において、長期間にわたりその出向先法人の業務に従事することをいいます。出向については、①出向者の給与負担 ②出向先で役員となっている場合の役員給与の2点の取扱いについて、特に注意が必要です。

出向の形態

出向者に対する給与の取扱い

出向者が出向先法人で役員となっている場合

出向者が出向先で役員となっている場合には、出向先法人が支出する出向負担金は役員給与に該当します。よって、定期同額給与や事前確定届出給与等に該当する役員給与として損金算入するためには以下の手続が必要です。失念した場合には、原則として損金算入することは出来ません。

  1. 役員に係る給与負担金額について、その役員に対する給与として出向先法人の株主総会等の決議がされていること。
  2. 出向契約等において出向者の出向期間及び給与負担金額があらかじめ定められていること。

Q1.当社は、使用人甲を子会社へ出向させる予定です。当社では、甲に対し給与を30万円支給してきましたが、子会社の給与規定に基づき甲の給与を計算すると20万円になるため、当社はその20万円を子会社から受け取ることにしています。差額の10万円は、当社が実質的に負担をすることとなりますが、税務上の問題は生じますでしょうか。

A1..出向元法人である貴社と出向者甲との間には、雇用契約が継続しており、一般的には、貴社が出向後においても従来どおりの労働条件を補償することになります。子会社における給与条件が貴社よりも劣るような場合には、貴社に負担額が生じることになり、一般的にはそれを較差補てん金といいます。貴社が、給与条件の較差を補てんするために実質的に負担した10万円は、甲に対する給与として損金となります。
なお、以下のようなケースも較差補てん金として認められます。

  1. 出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給できないため、出向者に対して出向元法人が賞与を支給した場合
  2. 海外の子会社等に出向した場合に、出向元法人が支給する留守宅手当

Q2.当社は、親会社から技術指導を受けるために出向者を受け入れました。当社は、親会社に対し出向負担金として100万円を支払う予定ですが、親会社から出向者に対しては従来通りの給与である70万円を支給するとのことです。この場合に何か税務上の問題は生じますでしょうか。

A2.子会社である貴社は100万円を負担するということですが、その内訳は、出向者の給与相当額である70万円と、それを超えて支払う30万円ということになります。給与負担金は損金となりますが、超過額30万円の取扱には注意が必要です。
すなわち、貴社が負担する30万円については、特別に支出すべき理由があるかどうかの判断が必要です。親会社からノウハウ等の技術指導を受ける場合など合理的な理由がある場合には、損金算入が認められます。しかし、合理的な理由がない場合には、親会社に対する寄附金として取り扱われます。この合理的理由の有無については、税務調査において問題となる可能性もありますので、通常の業務の他に行なっている業務内容や負担金額の算定根拠などをきちんと説明できるように、事実関係を示す資料を準備しておく必要があるでしょう。
なお、消費税の取り扱いについては、技術指導料等に該当する場合には、課税仕入れ、寄附金に該当する場合には、課税対象外取引となります。
親会社では、収受した100万円が全額益金として取り扱われます。消費税の取扱は、70万円は給与負担金ですので課税対象外取引、30万円については技術指導の対価であれば課税売上げに該当し、寄附金の場合は課税対象外取引となります。

Q3.当社には親会社からの出向者がおり役員として勤務しています。当社は出向負担金として親会社に年額で720万円を支払う予定です。出向負担金の支払い方法について注意点があれば教えてください。

A3.親会社で社員であっても、出向先の子会社で役員となっている場合には、その給与負担金は税務上役員給与の取扱を受けます。以下の税務上の取扱を参照してください。定期同額給与に該当しない場合には、原則として損金不算入となりますので、損金算入にするためには、所定の届出を所定の時期までに所轄税務署長に提出し、事前確定届出給与に該当する役員給与にするなどの手続きが必要になります。

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