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第76回 「マイナンバー制度に関する税務の再確認」|個人番号の提供を受ける場合の留意点

第76回 「マイナンバー制度に関する税務の再確認」|個人番号の提供を受ける場合の留意点

 アクタス税理士法人

マイナンバー制度と税分野での活用

平成27年10月より「個人番号」「法人番号」の通知が順次開始されます。「個人番号」は、住民票のあるすべての人に付番される12桁の番号で、社会保障、税、災害対策の分野で利用されます。

法人番号」は、法人や地方公共団体等に付番される13桁の番号で、利用範囲の制約がなく誰でも自由に利用できます。税分野では、税目ごとに番号記載の開始時期が定められており、原則として平成28年1月より利用が開始されます。

  1. 所得税・贈与税:平成28年分の申告書(平成29年1月以降に提出するもの)から
  2. 法人税:平成28年1月1日以降に開始する事業年度に係る申告書から
  3. 消費税:平成28年1月1日以降に開始する課税期間に係る申告書から
  4. 法定調書:平成28年1月以降の金銭等の支払等に係るものから

マイナンバー制度は、平成28年1月より個人番号カードの交付が始まります。そして平成29年1月には個人ごとのポータルサイトである「マイナポータル」の運用が開始される予定です。さらに平成30年以降には任意ではありますが預金口座への紐付けも予定されています。

番号記載の対象となる税務関係書類

個人番号及び法人番号の記載が必要となる主な税務書類は次表に掲げる通りです。支払者が税務署等に提出する書類には、個人番号や法人番号の記載が必要となります。なお、平成27年10月2日に所得税法施行規則などの改正が行われ、従業員など支払を受ける方へ交付する源泉徴収票等への個人番号の記載は行わないこととされました。

個人番号および法人番号の記載が必要となる主な税務書類

税務署等への提出書類 従業員から提出を受け保管する書類
給与所得や退職所得の源泉徴収票 給与所得者の扶養控除等(異動)
申告書
給与支払い報告書 銃たる給与についての扶養控除等(異動)申告書
報酬、料金、契約金及び賞金の
支払調書
保険料控除兼配属者特別控除申告書
不動産の使用料等の支払調書 退職所得の受給に関する申告書

個人番号の提供を受ける場合の留意点

上記に示す「源泉徴収票」や、年間支払総額5万円を超える「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」や年間支払総額15万円を超える「不動産の使用料等の支払調書」を税務署等に提出する場合、その書類に個人番号の記載が必要となります。そのためには事前に個人番号を取得することが必要です。さらに、個人番号取得の際には、本人確認の手続きが必要になります。以下個人番号の取得保管に関する注意点を記載します。

  1. 個人番号の利用目的通知書の作成
    個人番号を取得する際、会社が何のために個人番号を使うのかを通知しなければなりません。円滑に個人番号の取得手続きを行うために、事前に「個人番号の利用目的通知書」の社内書式を作成し、提供を求める際に提示できるようにしておきましょう。
  2. 個人番号の提供を受ける時期
    報酬・料金等の契約書、不動産賃貸借契約書を取り交わす際、その契約内容・契約金額から支払調書の提出が必要か確認できます。支払調書の提出が必要と判断できた場合には、契約締結時に個人番号の提供を求めることが有用です。
  3. 支払調書の提出
    支払調書の個人番号の記載時期は、平成28年1月以降の金銭等の支払等に係るものからですので、多くの会社で行われる実際の事務作業は平成28年12月以降に発生します。ただ、この1年の準備期間に円滑に外部から個人番号を取得し、適正に管理しておくことが重要です。

Q&A

Q1.従業員や報酬等の支払先から個人番号の提供を受けられない場合にはどうしたらいいですか。

A1.税務署等に提出する書類に記載することは法律で定められた義務であることを説明して、提供を求めてください。それでも提供を受けられない場合には、個人番号は記載せず提出をしてください。
ただし、提供を求めた経過等を記録、保存するなどして義務違反でない旨を明確にしておく必要があります。なお、法定調書等の記載対象となっている方すべてが個人番号を持っているとは限らず、その場合には個人番号を記載することができないので、番号の記載がないからといって税務署が書類を受理しないということはありません。

Q2.マイナンバー対応のためにかけたシステム費用などは、資産計上すべきでしょうか。

A2.法改正によるプログラムの修正は、現状の効用を維持するために行われるものとされ、修繕費でよいとされています。従って、現行の給与計算ソフトの年末調整項目に個人番号を付けるためのプログラム更新などの支出は修繕費に該当するものと考えられます。一方、個人番号を厳格に管理するためにサーバーを購入した場合など、新たな器具備品を購入したものと考えられるものについては、資産計上することとなります。

Q3.法人番号公表サイトについて教えてください。

A3法人番号公表サイトは国税庁が運営するホームページ<http://www.houjin-bangou.nta.go.jp/>です。平成27年10月26日より通知したものから順次検索・閲覧ができるようになります。
法人番号は、個人番号とは異なり広く一般に公表され、だれでも自由に利用できるものです。このサイトでは、法人番号の指定を受けた者の「商号又は名称」「本店又は主たる事務所の所在地」「法人番号」(基本3情報)が公表されており、法人番号の指定を受けたのちに商号や所在地等の変更があった場合には、公表情報を更新するほか、変更履歴も公表されます。

Q4.個人番号が記載された書類の漏えいがあった場合、担当者や会社への罰則はあるのでしょうか。

A4.従業員の指導等の一定の安全管理措置を講じていれば、意図せずに個人番号が漏えいしたとしても、ただちに罰則の適用となることはないとされています。
ただし、個人番号を取り扱う者が正当な理由なく故意個人番号を含む情報を漏えいなどした場合には、刑事罰が科されることとなり、個人情報保護法よりも罰則の種類が多く、法定刑も重くなっています。

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