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第96回 「積立NISAについて」|積立NISA制度と現行の(成人)NISA、ジュニアNISA制度との比較

第96回 「積立NISAについて」|積立NISA制度と現行の(成人)NISA、ジュニアNISA制度との比較

 アクタス税理士法人

2017年の税制改正により、積立NISAの導入が正式に決定されました。この積立NISA導入の目的は、現行のNISAが長期の積立投資に利用しにくいことを踏まえ、家計の安定的な資産形成を支援する観点から、少額からの積立投資を促進するためとされています。今回は、新しい積立NISAを中心にNISAについて説明していきます。

積立NISA制度と現行の(成人)NISA、ジュニアNISA制度との比較

それぞれの制度の比較

NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)は、投資信託や株の運用によって生まれた売却益や分配金などの利益にかかる約20%の税金が非課税となる制度です。現行の成人向けのNISAは2014年からスタートしており、2016年4月には未成年者を対象としたジュニアNISAもはじまりました。そして、今回の改正で2018年1月より新たに「積立NISA」が作られることになりました。この3つのNISAを比較してみました。

項目 積立NISA (成人)NISA ジュニアNISA
制度の対象者 20歳以上の居住者等 20歳以上の居住者等 0~19歳の居住者等
投資可能期間 平成30年から平成49年まで 平成35年12月まで 平成35年12月まで
非課税投資額 年間投資上限額40万円 年間投資上限額120万円 年間投資上限額80万円
非課税期間 20年間 5年間 非課税管理勘定で5年間継続管理勘定にて20歳になるまで
投資対象商品 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託投資商品(公募等株式投資信託) 上場株式・公募株式投信等 上場株式・公募株式投信等
投資方法 契約に基づく定期かつ継続的な方法による買付け
現行NISAとの関係 現行NISAとの選択による利用 積立NISAとの選択による利用 積立NISAとの選択による利用


積立NISAの特徴

現行の成人NISAは、年間の非課税投資額が120万円で非課税期間は5年間で、総額の非課税額は600万円(120万円×5年)となっております。一方、積立NISAの非課税枠は40万円と成人NISAの3分の1になりますが、非課税期間は20年と成人NISAの4倍になります。総額の非課税額は800万円(40万円×20年)まで拡大しています。
積立NISAは、基本的には、長期投資を考える人が毎月コツコツと運用資金を積み上げていくという制度になります。20年の長期間にわたり非課税という点が大きなメリットです。短期売買で利益をあげたいという方は通常の成人NISAを利用した方が良いです。また、成人NISAの年間120万円という枠を使いきっていない方などは、長期分散の投資である積立NISAの方が向いていると言えます。
積立NISAと現行のNISA制度は選択による利用になります。成人NISAで、国内株に積立投資していた状況から投資信託の積立NISAに切り替えたい場合には、国内株の売却により成人NISAの非課税期間は、そこで終了になります。積立NISAのメリット・デメリットを以下に整理しました。

メリット デメリット
  • 非課税期間が20年と長期のため、長期投資の果実を得やすい
  • 1年分が少額になっているため積立効果が得やすい
  • 非課税投資枠最大800万円(40万円×20年)
  • 運用できる商品は長期投資に向いている投資信託に限定されている
    (毎月分配型などは除外)
  • 短期間で大きく積み立てることができない
  • 非課税枠が年間40万円と少ない
  • 投資できる商品が限定的である
    (詳細Q2)
  • 積立NISAは現行のNISAとの選択制である
  • NISA口座等で発生した損失は、その他の課税口座の利益と損益通算不可

Q&A

Q1.NISAの加入手続きについて教えてください。

A1.積立NISA2018年1月からスタートするため、まだ加入することはできませんので、現行のNISA制度の加入について説明します。
まずはNISA口座を開設する必要があります。NISAは銀行や証券会社などが取り扱っており、銀行や証券会社によって取り扱う金融商品やサービス体系が異なります。たくさんの選択肢の中から、自分に合った金融機関を探すことになります。NISA口座をもてるのは一人1口座だけです。複数の金融機関に口座を作ることはできません。加入手続きは、口座開設を検討している金融機関から、口座開設の申込書類を取り寄せます。送られてきた書類に必要事項を記入し、マイナンバー・住民票等を添付し返送します。NISA口座の開設は税務署の確認も必要となるため、日数がかかります。

Q2.積立NISAで購入可能な対象商品はどのようなものですか。

A2.金融庁は、2017年3月30日に積立NISAで運用できる投資信託の基準を出しました。現在販売されている公募型の投資信託5,406本のうち、株がメインの投資先となる投資信託は3,088本、そこからさらに積立NISAの選定基準でふるいにかけると、インデックス型・アクティブ型の双方の投資信託で残るのは約50本程度となるようです。積立NISAは、2018年スタートの制度であるため、具体的な対象商品については、今年の後半ごろに明らかになる予定です。
インデックス型・・・値動きが日経平均株価やTOPIXといった市場平均ともいえる代表的な指数に連動する投資信託です。市場全体に投資しているので分散投資の効果が高く、値動きが比較的抑えられるという特徴があります。
アクティブ型・・・指数を上回る運用効果を目指す投資信託です。ファンドマネージャーが値上りを見込める銘柄に積極的に選別投資をすることで高いリターンを追求します。

Q3.iDeCoとNISAの違いは何ですか。

A3.iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金の一つです。掛金を60歳になるまで拠出し、60歳以降加入期間に応じて5~20年で年金を受給します。iDeCoは3つの税制優遇があります。現行の成人NISAとiDeCoの違いは以下の通りです。

項目 現行NISA iDeCo
税金面
  • 運用益が非課税
  • 受取時非課税
  • 運用益が非課税
  • 掛金が全額所得控除の対象
  • 受取時
    年金:公的年金等控除
    一時金:退職所得控除
商品
  • 株式、投資信託・REIT・ETFなど幅広い
  • 預金、保険商品、投資信託で限定的
年間投資可能額
  • 上限120万円
  • 人によって異なる
    ※企業型年金のある会社員
    →年間24万円
運用期間と現金化
  • 原則5年運用し、いつでも現金化可能
  • 60歳まで運用し、それまで引出原則不可
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