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第113回 「電子申告義務化のポイント」|税務会計業務のポイント

第113回 「電子申告義務化のポイント」|税務会計業務のポイント

 アクタス税理士法人

国税の電子申告・納税システム(e-Tax)の普及も進んできており、国税庁の調べによりますと、2016年度の申告や申請における「法人税申告」のオンライン利用率は79.3%となっております。なお、国税局調査部所管法人(原則資本金の額等が1億円以上の法人)の利用率は56.9%にとどまっています。そこで、2018年度税制改正において「電子情報処理組織による申告の特例」が創設され、大法人の法人税等の電子申告が義務化されました。なお今回は、中小法人等は電子申告義務化の対象になっておりません。ICTの活用の推進、納税環境の整備による納税者の利便性向上、企業の生産性向上、行政手続コストの削減などが狙いとなります。

電子申告義務化の具体的内容

項目
内容
1.対象項目 法人税、地方法人税、消費税及び地方消費税、法人住民税、法人事業税などの納税申告書
2.対象法人の範囲

(1)法人税及び地方法人税

  1. 内国法人のうち、その事業年度開始の時において資本金の額等が1億円を超える法人
  2. 相互会社、投資法人及び特定目的会社

(2)消費税及び地方消費税
 (1)に掲げる法人に加え、国及び地方公共団体

3.対象手続 確定申告書、中間申告書、仮決算の申告書、修正申告書及び還付申告書
4.対象書類 申告書及び申告書に添付すべきものとされている書類の全て
5.適用日 2020年4月1日以後に開始する事業年度から適用
※3月決算法人については、2020年11月30日提出期限となる法人税の中間申告より義務化となります。

電子申告義務化の主なポイント

今回の大法人の電子申告義務化に際して注意すべきポイントを3つあげさせていただきます。

  1. 資本金の額等が1億円超であるかどうかの判定時期は、事業年度開始の時になります。
  2. 義務化の対象法人に該当した場合には、義務化の対象となる事業年度開始の日か1か月以内に所轄税務署長に『e-Taxによる申告の特例に係る届出書』を提出しなければなりません。既に電子申告に対応している法人であっても届出を提出する必要があるので注意が必要です。
  3. 義務化の対象となる書類には、「申告書に添付すべきものとされている書類の全て」となっておりますので、例えば、法人税における財務諸表、勘定科目内訳明細書や消費税の申告書付表なども対象になります。

中小法人等にも適用される利便性向上施策

電子申告の義務化に伴い、法人税等の申告データを円滑に提出できるよう申告環境整備が進められます。これは「利便性向上施策」として全16施策が、義務化の適用開始までに順次実施されていきます。この利便性向上施策は、電子申告が義務化されない中小法人等にも適用されます。

全16施策は、「提出情報等のスリム化」「データ形式の柔軟化」「提出方法の拡充」「提出先の一元化」「認証手続の簡便化」「その他」に分類されます。その中で特に重要論点となる以下の項目について確認します。

  • 勘定科目内訳書の記載内容の簡素化(2019年4月以後終了事業年度の申告より適用)勘定科目内訳書の①記載省略基準の柔軟化(件数基準の創設)、②記載内容の簡素化が行われます
    ① 売掛金や買掛金など、記載量が多くなる勘定科目を対象に、上位100件のみ記載
    ② 貸付金の貸付理由や借入金の借入理由などの記載項目を削除し、簡素化
  • データ形式の柔軟化(2019年4月以後終了事業年度の申告より適用)法人税別表の明細記載を要する部分(別表6(1)など)や財務諸表※、勘定科目内訳明細書について、XML形式のほか、CSV形式による提出が可能(CSV形式を簡易に作成できるよう標準フォームが提供される予定)
    ※財務諸表は2020年4月以後終了事業年度の申告より適用
  • 添付書類の提出方法の拡充(2020年4月以後終了事業年度の申告より適用)電子申告において、以下のデータ形式に変換したものはe-Taxによらず光ディスク等による提出が可能
    • 別表の明細書記載分(CSV形式)
    • 財務諸表・勘定科目内訳書(CSV形式)
    • 第三者作成書類等(PDF形式)

Q&A

Q1.納税申告書以外の税務関連書類についても義務化の対象となりますか。

A1.義務化の対象となるものは、法令上「納税申告書」と定めています。そのため「消費税簡易課税制度選択届出書」などの届出書は、「納税申告書」に該当しないため、義務化の対象となりません。

Q2.電子申告をせず、書面で申告した場合に罰則はありますか。

A2.大法人は、申告書及び申告書に添付すべきものとされている書類の全てを電子申告により提出することが義務付けされることになるため、申告書関係はほぼ全てを電子申告することになります。法定申告期限までに電子申告により申告書を提出せず、書面により提出した場合には、その申告書は無効なものとして取り扱われ、原則、無申告加算税の対象となります。また、2期連続で法定申告期限内に申告がない場合は、青色申告の承認が取消されることにもなるので注意が必要です。災害等の理由によりインターネット回線が故障し、法定申告期限までに電子申告ができなかった場合には、税務署長から一定の承認を得ている場合に限り、書面提出が認められます。

Q3.税務申告ソフトで対応していない別表がある場合、どのように対応するのでしょうか。

A3.義務化の対象となる大法人では、申告書に関する全てが電子申告の対象となります。しかし、電子申告義務の一部が履行できない場合について、「申告書の主要な部分」がe-Taxで提出されているのであれば、その申告は有効なものとして取り扱うこととされています。ただ、「申告書の主要な部分」は明示されていません。そこで、申告ソフトで対応していない別表がある場合でもe-Taxソフトでは全ての別表に対応しているので、この部分だけe-Taxソフトで作成して、申告することもできます。

Q4.利便性向上施策には具体的にはどのようなものがありますか。

A4.利便性向上施策は、全部で16施策があり、次のような内容になります。

施策名
内容
施策名
内容
提出情報
等の
スリム化
① PDF形式で送信された添付書類の紙原本の保存不要化 提出先の一元化 ⑨ 連結納税の承認申請関係書類の提出先の一元化
② 土地収用証明書等の添付省略(保存義務への転換) ⑩ 連結法人に係る個別帰属額等の届出書の提出先の一元化
③ 勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化 ⑪ 財務諸表の提出先の一元化
データ
形式の
柔軟化
④ 法人税申告書別表(明細記載を要する部分)のデータ形式の柔軟化 認証手続の簡便化 ⑫法人の代表者から委任を受けた当該法人の役員・社員の電子署名でも可能
⑤ 勘定科目内訳明細書のデータ形式の柔軟化 ⑬代表者及び経理責任者の自署押印を廃止し、代表者の記名押印に変更
⑥ 財務諸表のデータ形式の柔軟化 その他 ⑭ e-Tax受付時間の更なる拡大
提出方法の拡充 ⑦ e-Taxの送信容量の拡大 ⑮ 法人番号の入力による法人名称等の自動反映
⑧ 添付書類の提出方法の拡充(光ディスク等による提出) ⑯ 法人税及び地方法人二税の電子申告の共通入力事務の重複排除
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