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開示業務について③(有価証券報告書を作成する際のポイント)

 株式会社アクリア

株式会社アクリア、コンサルタントの松田です。

第6回の内容は、「開示業務について③」です。
第4回及び第5回では開示スケジュールや内容、単体・連結決算業務の改善ポイントを取り上げましたが、第6回では、実際に有価証券報告書を作成する際のポイントについて取り上げていきます。

●概要

有価証券報告書(以下、「有報」)を効率的、かつ、正確に作成するためには、事前の準備と事後的なチェックが不可欠です。事前の準備では、情報収集すべき情報の洗い出し、会計上の影響額の把握、情報収集の時期やその方法を、事後的なチェックでは、検証のポイントをご紹介します。

●事前の準備

① 会計上のトピックス(新会計基準、新規取引、会計上の論点)について事前に検討します。
 1) 新たに適用される会計基準については、海外子会社を含めた連結グループ単位で、
   どの会社がどのような影響を受けるのかをできるだけ早期に把握し、
   情報収集の方法を決算までに検討しておく必要があります。
   そのステップとしては、次の通りです。

 ◆ 新たに適用される会計基準の内容及び適用の時期を把握します。
   会計情報誌、セミナー、ASBJ(企業会計基準委員会)のホームページ等を通じて、
   新たに適用される会計基準の内容を把握するとともに、適用の時期を把握することによって、
   対応可能な期間がどれだけ残されているのかを把握します。
 ◆ 連結グループのどの会社にどれくらいの影響(損益や総資産、負債総額)があるのかを
   過年度の情報を基に把握します。
   会計上の影響がない、又は、影響が極めて小さい場合には、有報へ記載しないことを検討します。
   また、従前の方法では、情報が取得できない場合には、簡易的に口頭やメール等で子会社等の担当者に
   ヒアリングを行うなどして、大まかな影響額を把握することが考えられます。
 ◆ 開示に向けた情報収集の方法としては、新たに連結パッケージを作成することや、
   影響を受ける会社が少ない場合には、個別に連絡してもらう方法などが考えられます。
   いずれの場合においても、情報収集の趣旨やどのような情報が必要かを事前に周知して、
   漏れなく正確な数値を入手できるようにしておくことが大切です。

例えば、2019年度では、日本基準を採用している会社においても、海外子会社がIFRSを適用している場などは新リース会計基準が適用となり、使用権資産の表示方法(使用権資産として表示するか、有形固定資産等に含めて表示するか)や会計方針の記載方法等について、頭を悩ませられたこともあったのではないでしょうか。
このような新会計基準については、いかに早い時期に開示上の論点を識別し、事前の準備を行うことができるかが有報作成の早期化の鍵となります。

 2) 新たに開始した取引(例えば、商取引や制度)、頻度の低い重要な取引(増資や子会社の取得等)や
   会計上の論点(例えば、固定資産の減損等)については、会計処理のみならず、
   開示についても同時に検討しておきます。
   このような取引等では、会計処理の決定に労力を要してしまい、
   開示については疎かになってしまうことがあります。
   以前、私の経験におきましても、子会社の取得の時期が論点となったことがありました。
   その時期の決定や会計処理に多くのリソースが割かれましたが、思わぬところに落とし穴がありました。
   この子会社の取得によって、関連当事者の範囲が大きく拡大しており、
   そのことに気が付いたのが決算作業中であったため、
   関連当事者との取引額を集計するのに非常に苦労しました。
   このような取引に限らず、会計処理の検討を行っている際に、
   開示内容や集計方法についても同時に検討することで、後から必要な情報を収集する必要がなくなり、
   効率的な決算作業に繋がります。

●事後的なチェック

② 財務諸表本表との整合性を確認することで、基礎データのアップデート漏れや連結パッケージの入力漏れ、
  入力ミス等の発見に役立てます。

注記事項のうち、財務諸表項目の内訳の開示や期首から期末にかけての増減内容の開示など、財務諸表本表の金額と一致するものがあります。このような項目のほか、金額規模や比率関係の観点で、関連する項目との整合性を確認することによって、誤りを発見するきっかけとなることがあります。
例えば、IFRSの注記で求められている有形固定資産の増減表を作成したときのことです。増減表では、減価償却累計額と減損損失累計額の増減を分けて開示する必要があったのですが、一部の連結子会社において、減価償却累計額と減損損失累計額とが区別せずに記帳されており、連結パッケージ上も両者の合計値が入力されていたということがありました。増減表の作成後、一見したところでは、減価償却費累計額と減損損失累計額が連結精算表とも一致しており、問題ないように見えましたが、損益計算書の減損損失の金額と照らし合わせたところ、両者の金額規模が整合していないことに気が付き、上記の事実にたどり着くことができました。このように、財務諸表本表と注記事項等との整合性を検討することで、容易には気が付かないような誤りを発見するヒントになります。
③ 前期数値との増減分析を行うことで、俯瞰的な見地から検討します。
会社を熟知した経験豊富なマネジメントは、財務諸表等を一目見ただけで誤りに気が付くことがあります。これは、財務諸表項目の金額の規模や増減の方向性を自身の理解と瞬時に照らし合わせることで成し遂げられるものであり、誰もが容易にできるものではありません。しかし、このような深い理解がなくとも、前期数値との比較を行い、前期から大きく増減した項目について、どの会社のどの取引によるものかを掘り下げることにより、同様の効果を得られることがあります。また、このような増減分析は、偶発債務やコミットメントライン、担保に供している資産及び対応する債務の注記等のように財務諸表本表との整合性を直接確認できないような項目の集計漏れに対して非常に有効です。

●まとめ

【事前の準備】
◆会計情報誌、セミナー等を通じて、新たに適用される会計基準を把握します。
 また、会計上のトピックスとような取引がある場合には、
 会計処理を検討するとともに開示に与える影響も同時に検討します。
◆ 連結グループのどの会社にどれくらいの影響があるかを把握し、開示の要否を検討します。
◆ 漏れなく正確に、かつ、効率的に情報収集ができる手段を検討します。

【事後の検証】
◆ 財務諸表本表と注記事項との金額の水準や比率関係の整合性を検討します。
◆ 前期数値との比較を行うことによって、俯瞰的な見地から検討します。

当社におきましても上場会社様の管理部より決算開示サポートを依頼頂く事が多くあります。上記の事前準備や事後的な検証のポイントにつきましては上場会社様の管理部の目線で記載させていただきましたが、当社のコンサルタントも同様の目線で業務を実施しております。特に、事前準備の段階から各種開示書類の作成に精通した公認会計士によるアウトソース支援を受けることにより、情報の収集漏れの減少や基礎データの誤りの早期発見に繋がり、開示実務の効率化を実現できている事例が増えてきておりますので、そういった外部リソースの活用も有用かと思われます。

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